社説:終電繰り上げ 安全性向上につなげよ

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 JR東日本は来年春から山手線や東海道線、中央線など首都圏の17路線で最終列車の発車時刻を最大で30分程度早める方針だ。首都圏で終電を一斉に繰り上げるのは、同社が1987年に発足して以来初めて。詳細は来月発表するとしている。

 目的に挙げられているのは労働環境の改善だ。線路など鉄道設備の保守・改良作業は主に終電から始発までの間に行われる。終電を繰り上げればその分、作業に充てる時間が確保できる。深夜から未明にかけての作業だけになり手が少なく、人手の確保は大きな課題だった。

 JR東日本は併せて機械化を進め、作業員の負担軽減を図るとしている。作業体制が脆弱(ぜいじゃく)になれば運行に危険が生じかねない。終電繰り上げを安全性の向上につなげてほしい。

 背景にはここ数年、深夜の乗客が大幅に減ったことがある。ワークライフバランスが求められる中、遅くまで残業したり、長時間にわたって飲み会を楽しんだりする人が、ひと頃に比べて少なくなったということだろう。

 そこに新型コロナウイルスの感染拡大が重なった。3密(密集、密閉、密接)を回避する目的から、自宅で仕事をするテレワークが浸透し、電車通勤する人自体が減少した。終電繰り上げに踏み切ったのは、自然な流れと言える。

 終電の発車時刻は、主要路線では渋谷を発車する山手線外回りの池袋行きが現在の0時52分から20分近く繰り上がり、同じ時間帯の内回りも同程度繰り上がる見込みだ。利用する側はできる限り一定の時間内に仕事を終わらせ、従来より早く帰宅の途に就くことを心掛けたい。

 ただ、仕事の内容から、帰宅するのがどうしても深夜に及んでしまう人は多い。JR東日本は、平日で約2万人の乗客に影響が及ぶとしている。

 経済面の損失を懸念する声もある。だからこそ、繰り上げを実施するに当たっては、その必要性を繰り返し丁寧に説明し、広く理解を得るよう努めるべきだ。

 首都圏を走るいくつかの私鉄も、JR東日本と同時期に終電繰り上げに踏み切る方針を相次いで打ち出している。JR東日本と私鉄には、相互の終電の接続が途切れて乗客が困ってしまうことのないよう連携して対応してもらいたい。

 いざ繰り上げした場合、今度は終電前の時間帯の電車が混雑することも懸念される。そうなってしまっては新型コロナ感染が拡大しかねない。適宜列車を増発するなど、混雑回避に力を尽くすことが求められる。

 新型コロナは東京をはじめとする大都市圏で感染が広がり、人々の移動に伴って地方へと波及する流れが顕著となっている。これに歯止めをかけるためには、大都市圏の人たちの感染防止に向けた対策や意識の向上も必要だ。

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