北斗星(12月3日付)

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 釣りスポットとして知られる大仙市神宮寺の大浦沼で、動かないと思われていた小島が移動を繰り返していた。島の正体は水面を覆う植物群落。沼底の泥を取り除く工事で水の流れが変わったのが原因らしい。自然の絶妙なバランスをあらためて実感させられた

▼釣りスポットと言えば、落語の「置いてけ堀」を思い出す。江戸の本所の堀で魚をたくさん釣り上げた人が夕方、帰ろうとすると、堀の中から「置いてけ」と恐ろしげな声がしたので逃げ出した。「本所七不思議」として知られる言い伝えの一つ。今でも「置いてけぼりをくった」と言うが、その元になったとされる

▼動植物や自然現象のさまざまな異変が起源と思われる奇談・怪談は、昭和初期までは各地に残っていたようだ。横手市雄物川町にも「沼館七不思議」があったことを大正年間の本紙が伝えている

▼地元の床屋さんから聞いた話らしい。雨が降っても干ばつになっても水位が変わらない「乾かずの沼」、どう加工しても豆腐にならない「馬場の豆」、どんな暴れ馬でもくぐろうとしない「八幡神社の鳥居」などと続く

▼かつては地域ごとに不思議が語り継がれていたことがうかがえ興味深い。地域によっては今なお、埋もれた七不思議があるのかもしれない

▼ちょっとした自然現象にも神秘や不思議を感じ、物語を紡ぎ出した昔の人々の想像力には感心させられる。当時の人が大浦沼の「動く小島」を見たら、どんな物語が生まれることだろう。

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