社説:種苗法改正 懸念解消へ随時見直せ

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 改正種苗法が臨時国会で成立した。国内で開発されたブランド果実などの種や苗木を海外へ持ち出すことを禁じ、育種家ら開発者の権利を保護するのが主な狙いだ。

 種苗法の趣旨は、開発者が国に登録した品種を知的財産として一定期間、保護することにある。新品種の開発が多額の費用と長い年月を要することを考えれば当然のことだ。

 ただし改正前の法律では海外流出を止めることができない。国内で登録品種を正規に購入、海外に持ち出し産地化しても合法だ。実際、高級ブドウ「シャインマスカット」など登録品種の海外流出が絶えない。

 これでは開発の苦労が報われず、しかるべき利益が開発者に還元されない。その対策として、改正法では登録時に栽培地域や輸出先を指定できる。指定地域以外での許諾なしの栽培、海外への無断持ち出しは生産・販売の差し止め対象となる。

 日本からの流出を巡っては、韓国へのイチゴの品種流出で損失額は数十億円に上るとの見方もある。確実に流出を防ぎ、開発者の権利と利益を保護するため、農林水産省は適切に法律を運用する必要がある。

 この法律を巡っては、農家の「自家増殖」が問題になったことを忘れてはならない。収穫物から採った種などを用いて栽培するのが自家増殖だ。

 改正法では、登録品種を自家増殖する際にも開発者の許諾が必要となった。この許諾制の導入に対して会員交流サイト(SNS)などで懸念や慎重論が広がり、先の通常国会で継続審議となった経緯がある。

 一体、どんな懸念があったのか。開発者である種苗メーカーによる高額の許諾料請求や種の購入費増加で、農家の負担が増す恐れがあるといった声だ。

 自家増殖については、実際に農家の多くが行っていることを示すデータがある。農水省の調査では登録品種を自家増殖している生産者は5割以上、野菜に限れば7割を超えている。主な理由は「種苗量の確保」や「種苗購入費の削減」などだ。

 懸念の声に対して農水省は「高額な許諾料の請求は通常はない」という立場だ。国や都道府県による新品種開発は普及が目的だからだという。種苗業に詳しい専門家は「競合する民間企業も費用を上げにくい」と見る。だが農家の負担が今後増えないと言い切れるのかどうか。

 国内の農産物は在来種など一般品種が大半を占め、許諾なしに自家増殖が可能だ。そこに着目した民間企業が地域の共有資源ともいうべき在来種を勝手に改良し、登録品種とする可能性を指摘する声もある。

 登録品種の許諾制という仕組みが大企業に巧みに利用され、高額な許諾料が農家の経営を圧迫するようなことがあってはならない。改正法の運用に当たり、農水省は問題点がないかを随時精査し、見直すべきだ。

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