社説:自衛隊看護師派遣 医療支援、体制構築急げ

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 防衛省が北海道旭川市に自衛隊の看護師「看護官」らを派遣した。新型コロナウイルスの感染拡大で医療体制が逼迫(ひっぱく)、北海道知事が自衛隊法に基づき「災害派遣」を要請していた。

 大阪府へも派遣される見通しだ。自然災害と同様、「人命」を守る自衛隊の活動目的と合致すると防衛省が判断した。それぞれの医療体制がそれだけ危機的状況にあることを直視しなければならない。

 旭川市では感染者200人前後の大規模クラスター(感染者集団)が病院で相次ぎ発生。新型コロナ病床の約7割が埋まった。大阪府では重症病床使用率が約7割となり、若年がん患者病棟や一般病棟の一部を一時閉鎖する病院が続出している。

 通常の医療にしわ寄せが及んでおり、一刻も早い支援が必要なのは誰の目にも明らかだ。医療従事者の心身の負担も極めて大きくなっている。それだけに自衛隊の活動が期待される。

 ただし支援体制が十分と言えるかは疑問だ。旭川市への派遣は看護官ら計10人、期間は2週間以内だ。人数が限られることから、防衛省幹部も派遣の効果は限定的とみている。

 北海道や大阪府には全国知事会が本県など自治体の協力の下、医師や看護師らを派遣。日本環境感染学会も各地に専門チームを派遣し始めた。一方で医療の司令塔であるべき厚生労働省の動きがなかなか見えない。

 自衛隊や知事会、学会の活動はあくまでも個別のものだ。日々変わる感染状況への共通認識を持ち、それぞれが緊密に連携しなければ十分かつ効率的な対処は難しい。厚労省は今すぐ前面に立って各地の正確な状況を把握、医療従事者を確保するとともに自治体や関係機関、病院などが相互に支援できる仕組みを早急に構築すべきだ。

 「第3波」による感染拡大で死者、重症者が増加。このまま拡大を抑え込めなければ、感染爆発に至る可能性もある。治療に当たり、患者の選別を迫られるような最悪の事態は避けなくてはならない。

 現状は国民の多くが経済活動よりも感染防止を求めている。世論調査では「感染防止」を求めるとの回答が7割以上、政府の新型コロナ対策を「評価しない」は半数超に達した。

 だが菅義偉首相は依然、経済活動を重視している。政府の観光支援事業「Go To トラベル」を来年6月末までをめどに延長。トラベルが「感染拡大の主要な原因とする証拠はない」というのが首相の立場だ。

 これに対し、トラベル利用者ほど感染リスクが高いとする調査結果を東大などが発表。人の移動を促す政策が感染拡大を招いている可能性もある。

 菅首相は「国民の命と暮らしを守るのが政府の最大の責務」と語る。その言葉の重みを自覚し、今は経済活動を一時抑制してでも感染拡大を抑え込むことに全力を挙げるべきだ。

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