社説:GoTo一時停止 判断、あまりに遅過ぎる

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 菅義偉首相が政府の観光支援事業「Go To トラベル」を全国で一時停止すると表明した。政府の新型コロナウイルス対策分科会の再三の提言などを受け、やっと重い腰を上げた。

 全国の状況を見ると、あまりに遅過ぎる判断だ。1日当たりの新規感染者は12日に3千人を超え、重症者が最多を更新。逼迫(ひっぱく)する医療現場からは「心身の疲弊は限界」と悲鳴が上がる。

 にもかかわらず、菅首相は人の移動を促すトラベル事業に固執。基本的な感染防止策の徹底を個人に求めたり、一部地域を対象から除外したりするなど小出しで場当たり的な対応を重ねてきた。そこに世論調査での内閣支持率急落が直撃。今回の決定を余儀なくされたようだ。

 トラベル事業の一時停止自体は評価できるが、疑問もある。なぜ今月28日からなのかがよく分からない。停止前日まで利用しても問題はないとのメッセージと取られかねず、この間に感染拡大の恐れはないのか。来年1月11日までという期間で十分なのかといった疑問もある。

 事業が感染拡大の主要因とする「証拠はない」が菅首相の持論だ。だが東大などの調査ではトラベル利用者ほど感染リスクが高いとの結果が出た。厚生労働省専門家組織は都道府県を越える移動歴のある20~50代の感染者がうつす例が多いと指摘。日本病院会は飲食を含むキャンペーンの中止を求めていた。

 事業と感染拡大の因果関係を示す決定的な証拠は現段階ではない。とはいえ、拡大の一因となっている疑いがあれば一定程度、強い対応を取るのが本来の対策の在り方ではないのか。

 疑わしい要因を確実につぶしていくような防止策を講じない限り、感染拡大を抑え込むのは難しいだろう。経済活動が重要なのは言うまでもない。しかし死者、重症者ともに増え続け、通常医療にしわ寄せが及んでいる現在の局面では「命」を優先するのは当然のことだ。

 コロナ患者受け入れ医療機関に医師、看護師を派遣した際、派遣元が受け取る補助金を倍増させることも政府は決めた。だが、これも場当たり的な対応でしかない。逼迫する医療現場を救うには、自治体や病院などが連携して医療従事者を派遣できる全国的な仕組みを整える必要がある。その仕組みをつくることこそ政治の仕事だ。

 観光業者への支援も必要となる。キャンセルに伴う補償の拡充を国土交通相は表明したが、果たして十分なのか。菅首相が打ち出した大型の追加経済対策に投入する予算を、事業者支援を含むコロナ対策全般に振り向けることも検討すべきだ。

 トラベル事業の再開と停止を判断できる一定の数値基準をつくることも欠かせない。対応が場当たり的になるのは明確な基準がないからだ。国民に公開された基準の下、自治体に丸投げすることなく、政府が責任を持って判断することが必要だ。

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