社説:パリ協定5年 「脱炭素」遅れ取り戻せ

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 山火事、洪水、干ばつ、暴風雨…。世界で頻発する災害については地球温暖化との関わりが指摘される。その対策が国や地域を越えて取り組むべき課題であることは言うまでもない。

 地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」採択から5年。国連がオンライン会合を開催し、参加した各国首脳らがそれぞれの新たな目標を披露した。

 パリ協定は、産業革命前からの気温上昇を今世紀末で2度未満、できれば1・5度に抑えることを目指す。これまで既に約1度上昇。各国の目標水準では今世紀末までに3度の上昇が予測され、自然災害などの一層の深刻化が懸念される。

 会合で菅義偉首相は「2050年までに温室効果ガス排出を実質ゼロにする」と表明した。ただ50年ゼロ目標はこれまでに120カ国が掲げている。従来目標の「50年に80%削減」から一歩前進したとはいえ、ようやく各国と並んだにすぎない。

 欧州連合(EU)は会合前に30年までの域内の温室効果ガス排出削減目標を、現行の1990年比40%から同55%に高める新目標で合意している。日本は3月に「2030年までに13年度比26%減」の現行目標を据え置いて批判を浴びた。世界5位の温室ガス排出国である日本が掲げるにしては見劣りする目標ではないか。

 50年ゼロ目標を打ち出した以上、達成のために短期の削減目標を見直し、引き上げることが求められる。来年1月にバイデン氏が大統領に就任すれば米国はパリ協定に復帰し、対策も前進し始める。各国との差をこれ以上広げてはならない。

 政府は「ガソリン車ゼロ」目標を明らかにしている。国内販売の新車について30年代半ばに全てを電気自動車やハイブリッド車などの電動車にする。しかし、ここでも中国や欧米が先行しており、国際的な潮流に追い付くのが目的だ。搭載する蓄電池の性能向上など国を挙げての取り組みが問われる。

 一方、再生可能エネルギーの導入拡大も探られる。洋上風力発電は現在2万キロワットにすぎないが、40年の発電能力を最大4500万キロワットに増やす目標が打ち出された。これは原発45基分の規模に相当する。環境問題や漁業者との調整、電力消費地への送電などクリアすべき課題は多いが、再稼働が進まない原発をカバーできる可能性もある。

 「脱炭素社会」を巡っては政府が3次補正予算案に2兆円の技術開発支援基金創設を盛り込んだ。新しい技術の研究開発に取り組む企業を後押しする。長い目でその成果に期待したい。

 これらの政策が効果を上げられるか見通せないが、ようやく見えてきた前進の兆しだ。ただ世界がこの課題を解決するため残された時間は限られている。パリ協定採択5年を機に、地球温暖化を防ぐため、あらゆる努力を惜しまないことを世界の共通理解として再確認したい。

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