北斗星(12月19日付)

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 目上の人に意見することは難しい。今も昔もそれは変わらないだろう。勇気が要るし、そもそも気が重い。ところが意見するのが専門のお役所が中国にあった。「諫院(かんいん)」といい、千年ほど前のことだ

▼「諫(いさ)める」という語を冠したこの官庁は意気盛んな者たちを任用した。大臣を批判するのが仕事だ。批判された側は言論によって正面から向き合った。実際には派閥抗争の手段になったが、大臣の暴走を抑える働きがあったという

▼異論を受け入れない政治は時にとんでもない方向に突き進む。だが、しっかりとした批判勢力があって修正できれば良い政治につなげられる。諫院の仕組みを考えた人々にはそんな考えがあったのだろう

▼この人の周りに諫言(かんげん)の士はいないのか。政権発足から3カ月が過ぎた菅義偉首相だ。新型コロナウイルス対策で後手後手に回り「Go To トラベル」の全国一時停止を表明、年末年始の慎重な行動を国民に求めた。その同じ日に15人程度の懇談会、8人でのステーキ会食に参加していた

▼政府は5人以上の会食の感染リスクを指摘。菅首相は会話時にマスクを着ける「マスク会食」を呼び掛けている。その当人が指針に従わなかった。国民に協力を求めながら、自分はほごにする。そこに見えるのは言行不一致以外の何物でもない

▼諫める人の姿が見えない政治はどこに向かうのか。「忠言は耳に逆らえども行いに利あり」という。大きな器にならなければ忠言する者も出てこない。

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