社説:建設石綿訴訟 速やかに被害者救済を

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 建設現場でのアスベスト(石綿)による健康被害の集団訴訟で、国の責任を認める司法判断が確定した。国が規制を怠ったのは違法として、二審東京高裁判決(2018年)は損害賠償の支払いを命令。それに対する国の上告を最高裁が退けた。

 東北の仙台市を含め全国9地域で計千人以上が起こした一連の「建設アスベスト訴訟」で、国の責任が確定するのは初めてであり、他の訴訟にも影響を与えそうだ。08年の提訴から12年半がたち、多くの原告が亡くなり、高齢化も進む。国は確定を重く受け止め、速やかに救済に取り組まなければならない。

 極細で繊維状の石綿は安価で断熱性や耐火性に優れ、建築材料に広く使われた。だが粉じんを吸い込むと肺がんや中皮腫の原因になると判明した。潜伏期間が数十年に及ぶ場合があり、発症すると多くは数年で死亡することから「静かな時限爆弾」とも呼ばれる。

 確定した二審判決は、1970年代初めには作業員が石綿関連疾患にかかる危険性を国が予見できたと指摘。遅くとも75年には、防じんマスク着用を雇用主に義務付け、現場に警告表示をするべきだったとし、原告327人に約23億円を支払うよう命じた。国の不作為を厳しく断じた内容で、国は猛省すべきだ。

 画期的なのは雇われた労働者だけでなく、「一人親方」と呼ばれる個人事業主も救済対象に加えたこと。健康を守る労働安全衛生法の対象に一人親方は含まれない、と国側は主張した。しかし判決は「建設現場で重要な地位を占めている」と実態を考慮。一人親方を理由に救済対象から外れる理不尽さが取り消された点を評価したい。

 今回の事案は建設現場で働く人の被害だが、2014年には最高裁が石綿製造・加工工場での被害について国の責任を認めている。大阪の工場の元労働者らが起こした「泉南アスベスト訴訟」判決だ。これを踏まえて国は、一定の条件を満たせば訴訟での和解に応じて賠償金を支払う方針を示した。

 石綿関連疾患で労災認定を受けた人は19年度までに1万7千人を超え、うち建設業は6割近くを占める。だが建設現場での被害について国は、作業環境が石綿工場とは異なるなどとして争ってきた。最高裁の判断は被害実態に即し幅広い救済が必要と示しており、意義は大きい。

 建設アスベスト訴訟の弁護団が求めるのは、訴訟を起こさなくても迅速な救済を受けられる基金制度の創設だ。弁護団によると訴訟を起こしている人は全被害者の1割に満たず、毎年500~600人規模で患者が増加。一刻の猶予も許されない。

 健康被害を受けた人にとって裁判を起こすことは大きな負担となる。「命があるうちに解決を」という原告側の切実な願いを受け止め、国は他の建設アスベスト訴訟の結果を待たず、直ちに救済へかじを切るべきだ。

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