イザベラ・バードの足跡をたどる:島田雅彦(2)蘇る祖母との思い出

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JR奥羽線で湯沢駅から後三年駅へ移動

 ローカル線に乗る楽しみは、車窓から風景の移り変わりを眺めているだけでも充分満たされるが、沿線住人の顔やコトバに直に接しつつ、この地方に暮らすもう一人の自分に想像を巡らせる時間にもなる。湯沢駅から奥羽本線の下り列車に乗り、後三年駅で降りた。いかにも由来を知りたくなる駅名だが、日本史で学んだはずの「後三年の役」のことは思い出せなかった。鎌倉幕府が開かれる百年前、奥州藤原氏栄華のきっかけとなった合戦の跡地がここだといわれ、時間感覚が狂った。旅人はその気がなくても、道中でいきなり別の時空に連れていかれる。ヴェネチアに半年ほど暮らしていたことがあるが、現在の日常の中に中世が並存しているので、毎日タイムスリップしている感じだった。これも一種の時差ボケか?

 駅も無人、合戦跡の金沢柵も無人で、何となく人恋しくなってきたところで、六郷へ移動した。寺町を歩き、バードも立ち寄った本覚寺の境内を見た後、町内の至るところにある湧水を見て回りながら、おのずと「水の都」とか「オアシスの町」のイメージを重ね合わせていた。人はその組成の七割が水ということもあり、水との親和性が高く、水に想像力を刺激されやすい。お茶や料理や風呂で六郷の湧水を堪能し、自分と水が合うかどうか確かめたかったが、地酒を買って、あとで体に取り込んでみることにした。

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