枝折れ多発、果樹農家から悲痛な声 連日の除雪負担重く…
「体力の限界」「収穫量が落ちてしまう」―。記録的大雪に見舞われた果樹産地の横手市や湯沢市では、雪の重みで枝折れなどの被害が多発している。連日の除雪による負担も重くのしかかり、農家からは悲痛な声が上がっている。

秋田県内最大のリンゴ産地横手市では、農家が連日、園地の除雪に当たっている。同市平鹿町醍醐の山谷真市さん(67)と長男修司さん(32)は、年明けから295アールの園地を回って枝の雪を払っている。
園地の半分を回ったところ、2割の木に枝折れなどの被害があった。修司さんは「覚悟はしていたが、雪の上に落ちた枝を見つけるとどうしようもない気持ちになる」と肩を落とす。枝や幹を傷つけないよう、慎重にスコップで雪を下ろす作業は骨が折れるという。
2011年に大雪で甚大な被害に見舞われ、ようやく収穫量が回復してきたところだった。真市さんは「雪が解けたらすぐに全体の状況を確認し、対応しなければ」と厳しい表情を見せる。修司さんは「大きな被害にならないことを願い、今はできることをやるしかない」と話す。
「ブドウ棚がつぶれる前に自分たちがつぶれてしまう」。横手市山内土渕のブドウ農家中村章さん(65)と妻千佳子さん(60)は、先月下旬から毎日、朝から夕方まで園地の除雪に追われている。夫婦で6カ所計60アールを管理しており、雪をかきわけて枝やブドウ棚の雪を払う。それでも枝が折れたり、幹が割れたりする被害が出ているという。

これまでの経験から、ブドウ棚は雪に埋まりにくいよう高さ210センチに設置している。雪が多い年は2月ごろ積雪が棚の高さに達するが、今冬は先月中旬に雪が棚を超した。
中村さんは山内地区周辺の農家52人でつくる横手観光ぶどう会の会長。ブドウ棚が倒壊した会員もいて、仲間の営農意欲が減退しないかが気掛かりだという。「高齢化が進む中、除雪のほか、支柱や針金の補修に手が回らず、栽培をやめてしまう生産者も出かねない。地域の農業を守るため、復旧費の補助があれば助かる」と語った。
サクランボが特産の湯沢市三関地区周辺の園地では、2メートル近くある積雪に木々が埋まっている。雪の重みで折れた枝の断面があらわになった木もある。市内では枝折れやビニールハウスのパイプが曲がるなどの被害も出ている。

同市相川の果樹農家田村靖宏さん(45)は、被害が約30アールの園地の広範囲に及びそうだという。60本もの木を除雪するには数日かかるが、今冬はすでに3周した。「降ればすぐ埋まってしまう。もうこれ以上降らないで」と嘆く。
収穫量の減少、ハウスの補修経費は経営にとって大きな打撃となるため、「気力だけでは乗り越えられない。行政のサポートもお願いしたい」と訴える。
田村さんはJAこまち桜桃部会の栽培部長を務める。「心が折れそうだが、まだ雪は続く。地域のサクランボを守るため、被害を最小限に抑える対策を考えていく」と自分を奮い立たせた。