北斗星(1月13日付)

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 「御大師(おだいし)講の夜は今年もどうやらひどい吹雪になって、雨戸をがたぴし鳴らしている」。北秋田市出身の直木賞作家、渡辺喜恵子さんの小説「みちのく子供風土記」の一節から。旧暦の11月23日から24日にかけて行われる年中行事が大師講である

▼大師は12人の子だくさん。貧しくて子供に食べさせる物がない。他の家から食べ物を盗んだのを神様が哀れみ、捕まらないよう吹雪で足跡を消した。それでこの日は決まって大荒れになるという言い伝えがある。「でしこ吹き」や「でしこ荒れ」である

▼今年の大師講は今の暦に直すと1月6、7日。急速に発達した「爆弾低気圧」の接近で、本県など日本海側で大荒れになった日と重なる。昨年末から続く異常な大雪に加え、記録的という言葉が付く暴風雪の被害が追い打ちをかけている。神様に恨み言の一つも言いたくなる

▼今年は異常続きだが、昭和の中頃まで大師講の晩は子供にとって楽しい日だった。地域で内容は異なるが各家庭で小豆がゆ、おはぎなどが振る舞われ、こたつに入り祖母の「昔コ(昔語り)」を聞いた

▼今も続いている地域はどれぐらいあるのだろう。だいぶ前に廃れた北秋田市では毎年1月下旬、園児を招いて昔コを聞く「大師コの集い」を開いている。昨年で30回の節目を迎えた

▼厳しい風雪を耐え忍ぶ暮らしの中、ささやかな楽しみを見いだしてやり過ごす。そのための知恵を子供たちに授けたいという親心がこもっている年中行事である。

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