社説:特措法改正案 強制より協力を基本に

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 新型コロナウイルス特別措置法に基づく緊急事態宣言が首都圏の4都県に続き、大阪など7府県に発令された。深刻な感染拡大が続く中、政府はコロナ特措法改正案を通常国会に提出することになる。宣言再発令後に改正を行うのは菅政権にとって痛恨の極みといえよう。

 改正案は「罰則」と「支援」をセットに、特措法に基づく休業・時短要請に実効性を持たせるのが柱だ。概要によると要請に応じない事業者には知事が「命令」でき、拒めば行政罰の「過料」を科せられるとしている。強制力をもって私権制限できる改正案である。国会での審議には慎重さが求められる。

 感染拡大を食い止めるためとはいえ、休業や時短を受け入れるのは店舗などを経営する事業者側にとって死活問題だ。罰則の導入による「強制」に頼るのではなく、十分な補償によって「協力」を得る道を基本とすることが肝要ではないか。

 そもそも罰則規定の導入を含む特措法改正は、昨春の第1波の際に全国知事会から要望があった。休業・時短要請に応じない事業者があり、店名を公表しても営業が継続されたケースがあったためだ。

 休業・時短に協力した事業者に対しては自治体から「協力金」が支払われたが、金額がばらついた。そのため不公平との指摘もあった。知事会が改正を求めたのは当然だ。

 知事会の要望に当時の安倍政権は「事態収束後に検討」として改正には着手せず、それに続く菅政権も腰が重かった。昨秋の臨時国会へ法案を提案することなく、野党が改正案を提出して国会の延長を求めたにもかかわらず国会を閉じた。

 改正への動きは「第3波」が深刻化した昨年12月下旬になってようやく浮上した。消極的だった菅政権が改正を急がなくてはならないまでに追い詰められたようにも映る。

 緊急事態宣言発令の前段階として「予防的措置」を新設することも打ち出された。首相権限で迅速な対策を目指す狙いだという。しかしかえって混乱が生じる懸念はないか。まだ緊急事態までに至っていないというメッセージにどれほどの効果があるのか理解に苦しむ。必要な時に決然と宣言を発令しなければ危機感は伝わらない。

 政府は感染者が入院勧告を拒否した場合、刑事罰を科す感染症法改正案も検討している。実効性を追求して人権をおろそかにすることは許されない。この点は特に丁寧な議論が必要だ。

 特措法の改正に限らず、医療提供体制などが十分強化されてこなかったのが悔やまれる。しかし今は直面する危機を乗り越えるため、あらゆる対策を総動員して感染拡大を抑制するのが政権の責務だ。特措法改正もその対策の一翼を担うとすれば、知事らの声にもしっかり耳を傾けた上、与野党による迅速な国会審議を求めたい。

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