北斗星(1月14日付)

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 菅義偉首相の仕事場である官邸の隣に重厚な洋館がある。激動の政治史の舞台となった旧官邸だ。2005年から歴代首相が居住する「公邸」として使われてきた。ここには「幽霊が出る」とのうわさ話が伝わる

▼1932年の五・一五事件で犬養毅首相が射殺され、4年後には陸軍青年将校らがクーデターを企てた二・二六事件が発生した。度重なる襲撃のせいか、「足音が聞こえる」「サーベルの振れる音がする」といった話が絶えない。盛り塩で邸内を清めた元首相の妻もいた

▼安倍晋三前首相は第1次政権時に公邸に住み、第2次は自宅からも通った。理由を「幽霊が出るから嫌だ」と語ったことがある。無論、冗談交じり。私邸の方がくつろげたのだろう

▼現在のあるじ、菅氏はまだ泊まったことがない。幽霊が気掛かりかと思いきや、そうではなさそうだ。住み慣れた議員宿舎から官邸までは車で約3分。引っ越すまでもないとの判断だと察しがつく

▼居住はしないが、先月から面会などで公邸を使う機会は増えている。目立つのは新型コロナウイルス対策の関係者との協議だ。緊急事態宣言の対象拡大を話し合ったのもここだった

▼同じ目に見えぬ相手でも、菅氏にすれば国家予算や内閣支持率をたちまち食い尽くすコロナの方が幽霊よりよほど手ごわいと感じているはずだ。「勝負の3週間」で抑え切れなかった感染の広がりを食い止められるのか。「正念場にいる」との危機感をいま一度、共有せねば。

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