社説:大館・ナシ長期保存 意欲的試みで収入増へ

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 「中山ナシ」などで知られる大館市中山、曲田両地区の果樹農家の女性たちが収穫後のナシやリンゴの販売期間を延ばそうと、品質保持剤を使った長期保存に取り組んでいる。リンゴについては県南地域などで実績があるが、ナシの長期保存は全国的にも珍しい意欲的な試みだ。通常なら品切れの時期に販売することで、単価上昇や産地の知名度アップにつながることを期待したい。

 取り組んでいるのは、同市の農産物直売所「陽気な母さんの店」の果樹部会のメンバーら。県北秋田地域振興局の支援を受け、2019年度はリンゴで実施。従来の冷蔵保存より期間を1~2カ月延ばすことができた。通常は収穫翌年の3月までの販売が限度だが、昨年は5月の大型連休中まで延長することができ、品質へのクレームもなかった。

 これを受けて20年度はナシの長期保存に挑戦。果実を詰め込んだ収穫用コンテナを大型の箱の内部に積み上げて密閉、品質保持剤をガス化させ噴霧してから冷蔵した。果実の老化作用を遅らせて品質を保つ仕組みだ。保持剤は二酸化炭素や水分などに分解されるという。

 昨年9月末に収穫した晩生種「あきづき」などを保存処理したところ、食感は1カ月ほどは無処理のものと大きな差はなかったが、11月以降はシャキシャキ感の差が歴然。同市のふるさと納税の返礼品として通常はリンゴ数種類のセットとなる時期に、ナシを加えたものを11月後半まで出荷することができた。

 振興局の分析によると、処理したナシは1月上旬も販売可能な食感を保っており、年末年始の贈答用にも使えそうだという。参加農家は「販売期間が延びて収入が増えれば後継者対策にもなる」と期待する。収穫時期や品種別の試験データを充実させ、安定的に販売できるようにしてもらいたい。

 注目されるのは、ナシもリンゴも小玉のものが品質保持剤の効きがよく、長期保存に適しているとみられる点だ。商品価値の高い大玉のものは旬の時期に販売し、売りにくい小玉のものを長期保存に回して時期外に販売すれば、単価が上がって収入アップが見込める。これまで価値が低いとされていたものが、新たな価値を生むわけだ。

 こうしたことは既存のデータなどからは想定できず、実際に取り組んでみて初めて分かったことだという。中山、曲田両地区は産地として一定の知名度があるが、それに甘んじることなく、挑戦する大切さをここに見ることができる。参加農家がさらに増え、みずみずしい果実を長い期間提供することで、消費者の認知度がさらに高まることを期待したい。

 今回のように「想定外」を味方に付けるのも、旺盛なチャレンジ精神あってこそだ。両地区の農家の女性たちの意欲的な取り組みに学びたい。

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