社説:通常国会開幕 感染抑制、信頼回復が鍵

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 通常国会が開幕した。菅義偉首相は就任後初めての施政方針演説で、新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めをかける決意を改めて表明した。

 今国会の最大の焦点は新型コロナ特措法改正案だ。緊急事態宣言を巡り、飲食店に対する罰則と支援をセットで制度化する。その背景には、11都府県に宣言を再発令したものの、これまでのところ効果が見えていないことがある。しかし、感染抑制への幅広い協力を得るには罰則よりも支援の充実が重要だ。慎重に議論しなければならない。

 緊急事態宣言では、店内での会食が感染拡大の機会になるとされる飲食店に対し、午後8時までの営業時間短縮を要請している。だが1日6万円の協力金では不十分との声がある。経営破綻を避けるため営業を続けざるを得ない場合もあり得る。

 特措法改正案は、時短営業などを知事が命令できるようにする。従わない場合は行政罰として50万円以下の過料を科すなどと規定する。

 さらに感染症法改正案も注目される。入院勧告を拒んだり、入院先を抜け出したりした感染者に「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」を科す厳しい内容だ。厚生労働省の専門部会メンバーから「新たな差別を生む恐れがある」「実効性があるのか疑問」などと慎重意見が相次いだ事実は重い。

 菅首相は特措法改正には消極的だった。感染拡大に歯止めがかからず、一連の対応が後手に回ったと批判を浴びる状況になってから態度を一変させたのはいかにも苦し紛れで、責任逃れとも見える。

 感染拡大を抑制する上で何より重要なのは、事業者や国民が進んで協力できる条件作りだ。罰則はあくまで最後の手段とすべきだ。強力な私権制限を伴う改正案であるだけに、拙速な議論は避ける必要がある。

 今国会に提出された2020年度第3次補正予算案には、一時停止中の観光支援事業「Go To トラベル」の経費約1兆円などが追加経済対策として計上されている。こうした予算を組み替えてでも、支援策を充実させる方が宣言の実効性を高めるのではないか。

 感染拡大抑制のため不要不急の外出自粛が呼び掛けられているにもかかわらず、各地の人出はあまり減っていない。時短営業などが徹底されるよう、国民の理解と協力を得る方策が欠かせない。

 その点で、コロナ対応の失敗や政治とカネの問題のために政治への信頼が揺らいでいることは見逃せない。安倍晋三前首相の「桜を見る会」前日の夕食会費補填(ほてん)問題や、吉川貴盛元農相=自民離党=が収賄罪で在宅起訴された問題などで、政府の対応が注目される。政治の信頼回復こそが感染抑制策への国民の理解と協力を得る鍵だ。菅首相は自ら政治不信を払拭(ふっしょく)しなければならない。

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