大雪での移動販売、高齢者「助かる」 外出困難な山間部など

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利用者宅を一軒一軒回る大仙市の南外さいかい市
利用者宅を一軒一軒回る大仙市の南外さいかい市

 記録的な大雪に見舞われた秋田県南部。積雪で外出が困難になった高齢者らに重宝されたのが、トラックで食料品を販売する移動販売だ。交通事情の悪化により食料品の買い物がままならない中、利用者からは「助かる」「ありがたい」と切実さをうかがわせる声が聞かれた。

 「ああよかった。ご苦労さま」。今月11日、大仙市南外の外小友地区にある住宅をNPO法人・南外さいかい市のメンバーが訪れると、高齢者がほっとした表情を見せた。2メートルもの雪の壁が迫る玄関前に止めたトラックには、肉や卵などの生鮮食品、手作りの総菜が並んだ。

 同地区は市中心部の大曲地域から車で30分ほどの雪深い農村部。小規模な集落が点在し、高齢化率は44%に上る。

 住民27人でつくるNPOは地区で唯一、生鮮食品を購入できる商店「南外さいかい市」を運営。先月からは店舗から遠い高齢者の買い物を支援するため、移動販売を始めた。山間部を3ルートに分けて週1回ずつ回り、見守りも兼ねる。

 当初は決まった時間に各集落での販売を予定していたが、寒い中雪道を通う利用者の負担が大きく、積雪で定時運行が難しいこともあり、一軒一軒訪問している。

 卵と牛乳を購入した佐々木愛子さん(82)は「自宅まで寄ってくれるのはありがたい」と感謝した。雪が降る前は車を運転して買い物や通院をしていたが、積雪が多くなりやめた。隣の市に住む娘に食料品を届けてもらったり、近くの友人に病院への送迎を依頼したりすることもあるが、自宅で買い物できる移動販売はとても便利だと語る。

 家にこもりがちな冬だからこそ、顔見知りのNPOメンバーと話すのも楽しみだ。「友達みたいに声を掛けてくれるのがうれしい」。料理の作り方などたわいない会話に気持ちが明るくなるという。

 NPO事務局を務める佐々木繁雄さん(69)は「雪道で移動販売の車を運行するのは大変なことも多いが、必要とされていると実感する。メンバー同士『頑張らなければ』との思いを強くしている」。

 高さ1~2メートルもの雪の壁ができた横手市金沢中野の国道13号沿い。12日の昼下がり、軽やかな音楽を流しながら1台の軽トラックが現れた。空き地に停車すると、住民が数人集まってきた。

 スーパーを展開する「よねや商事」(横手市)が行う移動スーパー・とくし丸だ。ドライバーの田中公紀さん(46)が野菜や魚、総菜がぎっしり並んだ商品棚を開けると、利用客は待ちかねたように品定め。目当ての商品を買い込み、「今日もどうもね」と言って帰って行った。

 常連の萩原百子さん(88)は野菜や刺し身を購入。「来てくれて本当に助かる」と喜んでいた。

 数年前に手術を受けてから体調に不安があり、雪道を1人で出掛けるのは難しい。60代の息子と一緒に暮らすが、道路状況が悪い中では運転に難儀させるのも気が引ける。だからこそ移動販売は貴重だ。「自分で見て買いたいからありがたい」と笑った。

 よねやは、横手市や大仙市など4市町でとくし丸を運行。集落ごとに分けたルートをそれぞれ週に1、2度回る。

 とくし丸本部(徳島県)によると、大雪の影響で外出を控え、買いだめする利用者が増えたことから、売り上げは例年より2、3割増えているという。田中さんは「雪で到着が遅れても楽しみに待ってくれている人は多い。あらためて移動販売の大切さを感じている」と話した。

 スーパーの「グランマート」などを展開するタカヤナギ(本社大仙市)では、電話注文を受けて宅配するサービスの件数が県南部で増加傾向にある。担当者は「大雪と新型コロナウイルスの影響ではないか」とみる。横手市十文字町で「スーパーモールラッキー」を運営するマルシメ(横手市)も、県南部で電話注文の宅配サービスや高齢者向け配食サービスを実施するほか、利用客向けのバスの運行といった買い物支援を行っている。

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