社説:案里議員有罪判決 潔く引責辞任すべきだ

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 一昨年夏の参院選広島選挙区を巡る公選法違反事件で、参院議員の河井案里被告(自民離党)が有罪判決を言い渡された。東京地裁は夫で元法相の衆院議員克行被告(同)との共謀を認定、買収などの罪で懲役1年4月、執行猶予5年とした。

 国会議員の夫妻が逮捕、起訴された前代未聞の大規模買収事件であり、政治への国民の信頼を損なった責任は重大だ。民主主義の根幹を成し公正であるべき選挙制度を、カネをばらまいてゆがめた行為は許されない。

 驚くべきは夫妻で現金を供与していたことだ。克行被告は地元議員ら100人に計2900万円余を配ったとされる公選法違反の罪で公判中。案里被告はうち4人への計160万円に関して共謀したとされる。

 事件の背景には保守分裂となった選挙情勢がある。自民党広島県連は現職を支援。これに対し支持基盤の弱い新人の案里被告を当選させようと克行被告が主導し、現金供与に突っ走った。それが判決が描き出した買収の構図だ。

 判決を受け、地元で議員辞職を求める声が出ているのは当然だろう。昨年の逮捕、起訴以降、案里被告が満足に議員活動をしてきたとは言い難い。判決は確定していないとはいえ、潔く引責辞任するのが政治家としての身の処し方ではないのか。

 自民党の責任も問われねばならない。参院選公示前、夫妻側には党本部から1億5千万円が入金された。落選した現職側の10倍に当たる。巨額資金が金権選挙の土壌になったのではないかとの疑念が依然拭えない。

 有罪判決に対し、党総裁でもある菅義偉首相は「個別事件の裁判所の判断について所感を申し上げるべきではない」と述べた。巨額資金に関しては「党で所定の手続きを経た上でルールに基づいて交付された」と従来の見解を繰り返した。

 これほどの大事件にもかかわらず、「政治とカネ」の問題に積極的に取り組む姿勢が見られないのは残念だ。このままでは政治への国民の信頼回復はますます遠のかざるを得ない。

 この事件が吉川貴盛元農相(自民離党)の汚職事件の端緒となったことも看過できない。河井夫妻買収事件に絡み、検察が広島県内の鶏卵生産大手を家宅捜索。押収資料などから現金授受疑惑が浮上し、収賄罪での在宅起訴につながったからだ。

 便宜を図ってもらいたいとの趣旨を知りながら、農相在任中に鶏卵生産大手のグループ元代表から現金計500万円を大臣室などで受け取ったとされる。立件はされなかったが他に計1300万円授受の疑いもある。

 吉川元農相は菅首相と衆院初当選同期であり、菅政権樹立を後押ししてきた。克行被告も首相と親しかったとされる。自身に近い政治家の事件だからこそ、菅首相は決然とした態度で「政治とカネ」の問題に取り組むべきなのではないか。

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