社説:横手市、3温泉返還 地域での役割再検討を

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 横手市が財政負担軽減などを目的に民間企業に譲渡した温泉3施設が、経営難のため先行き不透明な状況に陥っている。2施設は昨年7月、市に返還されており、残りの1施設も今年4月に返還される予定だ。いずれも現在は休館している。

 市は3月までに今後の方向性を示す。温泉施設は地域コミュニティーの核と位置付けられ、住民福祉の向上にも一役買ってきただけに、市民の声を十分に反映させた議論が望まれる。

 返還済みなのは増田地域の温泉宿泊施設「さわらび」と日帰り温泉「ゆ~らく」。今後返還されるのは山内地域の温泉宿泊施設「鶴ケ池荘」。3施設とも2018年4月、民間会社「横手温泉郷」(同市)に譲渡された。赤字経営が続く中、新型コロナウイルス感染拡大による利用者激減が打撃となった。

 同市には市町村合併前の6町村から引き継いだ温泉計9施設があった。民間譲渡は16年3月に策定した再編方針に基づく。人口減少に伴う税収減、高齢化による社会保障費の増大が見込まれることや、民業圧迫の回避などを理由に、市は「公共温泉事業の公益性は高いとは言えず、行政による運営はその役割を終えつつある」とした。

 温泉施設は維持管理や設備更新に多額の負担を要する。9施設は赤字経営が続き、市は年間計約2億円の運営費の支出を強いられていた。限られた財源を効果的に配分するため、行政サービスの優先順位をつけた結果の民間譲渡は理解できる。

 譲渡先の公募の結果、市は返還3施設を含む6施設の建物を無償譲渡。土地は3年間の無償貸し付けとし、その後に有償譲渡、または貸し付けする条件だった。引き受け手が見つからなかった3施設については市が18年度から3年程度、直営しながら譲渡先を探す計画だったが、コロナ禍もあって再公募には至っていない。

 譲渡に際し住民には「民間は不採算になれば撤退する」との不安があった。にもかかわらず市は、経営が立ち行かなくなった場合の対処方針を示してこなかった。コロナ禍の影響とはいえ、突然の休館、返還で地域に混乱を生じさせた責任は重い。

 返還3施設の今後に関しては存続させるかどうか、存続させる場合は運営形態をどうするかなど、検討すべき課題が多い。市の直営に戻すことは、温泉事業の公益性は低いと判断する限りハードルが高い。一方、住民に親しまれてきた施設をすぐに廃止する決断も難しいだろう。

 譲渡先を再公募する場合でも、当面休館を続ける間は源泉や施設の維持費がかかる。市が現在、直営している施設との整合性も問われることになる。

 コロナ禍で温泉の経営環境が厳しい中、地域での役割、必要性や施設内容などを改めて検討するべきだ。市は幅広い声に耳を傾けながら、住民が納得できる結論を導いてほしい。

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