社説:漫画の原画保存 相談窓口、機能充実図れ

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 漫画の原画収蔵に力を入れる横手市増田まんが美術館は2020年度、「マンガ原画アーカイブセンター」を開設し、原画保存に関する国内唯一の相談窓口業務に取り組んでいる。

 保存を進めるためには、膨大な量の原画を保管する施設の確保や、人材育成も欠かせない。美術館が蓄積してきたノウハウを生かし、原画を次世代に継承する仕組みを構築したい。

 まんが美術館は1995年に開館し、2019年にリニューアルオープン。昨年11月に亡くなった同市増田町出身の矢口高雄さんをはじめ、さいとう・たかをさん、浦沢直樹さんら国内外の漫画家182人の原画40万点超を収蔵する他に類を見ない施設として知られる。

 センター開設の背景には近年、原画の価値が見直されていることがある。その一方で漫画家の遺族が廃棄したり、長引く出版不況の影響で出版社が十分管理できなかったりと、原画保存の基盤は不安定だ。原画を美術品と見なす海外の収集家らの間で高値で取引される例もある。まずは原画の国外流出に歯止めをかけることが重要だ。

 まんが美術館は原画の価値にいち早く着目。漫画家や編集者らと信頼関係を築き、収集や保存、管理に努めてきた。運営に当たる横手市増田まんが美術財団は実績が認められ、文化庁の委託を受けて昨年7月、センターを開設した。

 漫画家や出版社の相談を受け、原画の保存について助言するほか、保存に取り組む全国組織をつくるための調整業務、原画保存の統一マニュアル作成や人材育成などを行う。委託は24年度まで。その間に独自に活動を継続できる基盤を整えたい。

 研究者の推計によると、国内の漫画原画は5千万点以上。現在の保存状態や原画の数、将来どのように扱いたいのかなど、原画を巡る状況や考え方は漫画家や出版社などによって異なる。手をこまねいていては原画の劣化や散逸が進んでしまう。現状をしっかり把握し、個別に対応する必要がある。

 原画を保存するためには受け入れ先の確保も必要だ。センターに寄せられた十数件の相談の中には、まんが美術館を受け入れ先に想定していた例が少なくなかった。同館は毎年計画的に収蔵を進めており、受け入れ可能な数は70万点と限りがある。そのためセンターは他県の施設への仲介などを検討している。

 廃校になった校舎や体育館などの活用も考えられる。災害などのリスクに備え、漫画家の出身地の自治体などと連携し保管施設を全国に分散させることが望ましい。原画保存のネットワークづくりを急ぎたい。

 人材育成など、新型コロナウイルスの影響もあって思うように取り組めなかった課題もある。しかし、原画保存の拠点がまんが美術館内にできた意義は大きい。コロナ後を見据え、着実に機能を充実させてほしい。

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