社説:感染症法改正案 懲役刑は削除が当然だ

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 新型コロナウイルスの感染抑制が急がれる中、与野党は新型コロナ特別措置法と感染症法両改正案の修正協議に入った。野党は感染症法改正案に盛り込まれた罰則のうち、入院拒否者への懲役刑は重過ぎると批判。与党は懲役刑の削除を検討する。

 懲役刑という刑事罰の導入は、新型コロナへの恐怖心をあおる懸念がある。その結果、感染者に対する偏見、差別を助長することにつながりかねない。

 政府は罰則により感染拡大の抑制策の実効性を高めるとしてきた。しかし感染の可能性がある人が、差別を恐れて受診を避けることもあり得る。家庭や仕事の事情で入院できない人もいるだろう。必要なのは人権尊重と、それぞれの事情に応じたきめ細やかな支援であり、懲役刑の削除は当然だ。

 感染症法改正案で修正協議の対象となるのは、知事の入院勧告を拒否した感染者への1年以下の懲役か100万円以下の罰金、感染経路を割り出す保健所の行動歴調査を拒否した感染者への50万円以下の罰金―という罰則規定だ。

 専門家らからは、同法改正案の罰則は法の理念に反するとの指摘が相次いでいる。同法はハンセン病やエイズへの差別、偏見への反省に立ち、患者を社会から排除する政策から脱却。感染症予防と患者の人権尊重を目指し制定された。時代に逆行する法改正としてはならない。

 昨春の緊急事態宣言発令時は、知事の休業要請に従わない事業者が問題になった。全国知事会は昨年6月、特措法を改正して罰則を導入するよう提言。安倍前政権は、新型コロナ収束後に検討するとして、法改正を先送りした。菅政権も踏襲した。

 知事会は昨年12月、感染「第3波」を受けて再び特措法改正を提言。営業時間短縮の要請に際しての順守義務や営業停止処分、協力金制度などの必要性を訴えた。政府は感染急拡大に押される形で改正にかじを切ったが、もっと早い時期から慎重に検討するべきだった。罰則には知事の側からも疑問視する声があることは見逃せない。

 新型コロナ感染の拡大に伴い、大都市部を中心に医療提供体制が逼迫(ひっぱく)。入院先や宿泊療養先の調整が追い付かず自宅待機を余儀なくされている人が増え、自宅で亡くなる人も相次ぐ。今重要なのは罰則導入よりも、病床や医療スタッフを確保し、確実に入院できる医療体制を整備することだ。

 特措法改正案には緊急事態宣言の前段階に当たる「まん延防止等重点措置」が盛り込まれた。宣言下、防止措置下で営業時短の命令に応じない事業者に対し、ともに過料を科す内容だ。

 経営破綻を避けるためにやむなく営業を継続する場合もある。命令や過料は私権制限を伴う措置であり、野党は国会への報告義務を課すことで乱用を防ぐことを求めている。与党は柔軟に対応すべきだ。

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