北斗星(1月29日付)

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 「自殺者が減った」という表現はおかしい。亡くなった人が生き返るわけではない以上、減ることは金輪際ない―。以前、そう言われて、はっとさせられたことがある

▼NPO法人「自殺対策支援センター ライフリンク」(東京)の清水康之代表の指摘だった。前年比で見れば「減った」のは確かだろう。だが過去から現在に至るまでの累計で捉えれば、増えることはあっても減ることはない。年間ベースでの自殺者数を比較したがるメディアへの問題提起だった

▼県警によると、本県で昨年自殺した人の数は193人だった。前年比24人減で減少率は全国で3番目の高さ。ただし清水代表の指摘に基づいて捉え直すとこの1年で193人増えたということになる

▼もちろん「前年比」にも意味はある。自殺防止対策には性別や年代、原因、職業などの属性情報が欠かせないといわれる。最新データと過去のデータを比べて増減を見なければ課題の把握は難しいからだ

▼昨年の全国の自殺者数は11年ぶりに増加に転じた。コロナ禍が影響している可能性があるという。「秋田は経済的な影響が遅れて表れる」と専門家は指摘。昨年の自殺者数は、コロナ禍のなかった「前年」とは単純比較できないのかもしれない

▼肝心なのは亡くなった人の思いや遺族の悲しみに心を寄せることではないか。自殺者が「24人減った」ことを分析して対策につなげるとともに、「193人増えた」という紛れもない事実に思いを致したい。

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