社説:ワクチン集団接種 地域事情配慮し進めよ

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 新型コロナウイルスワクチンの集団接種に向けた動きが国内で本格化してきた。政府は来月中の医療従事者への接種開始を目指す。続いて感染による重症化リスクの高い65歳以上の高齢者、持病のある人を優先する方針だ。一般はその後となる。

 11都府県に緊急事態宣言が出されているものの、国内の感染拡大にはなかなか歯止めがかからない。それだけに一日も早く集団接種を実現し、感染収束に全力を挙げなければならない。

 課題は山積している。ワクチン供給をはじめ、接種を担う医療従事者や大規模会場の確保、対象者把握のための台帳整備など都道府県や市町村は膨大な作業を担うことになる。

 集団接種は1994年の予防接種法改正以降、ほとんど行われていない。ノウハウが実施主体の市町村に残されているかどうか不透明な上、今回は比較にならないほど大規模になるとみられる。政府はこうした現状を正確に把握し、主導して接種体制を早急に整備すべきだ。

 コロナワクチンに特有の問題があるのも懸念材料だ。政府は供給契約を米英3社と締結。このうち、近く承認見通しの米国製は冷凍庫保存などが不可欠で解凍後は千回分以上を5日間で使い切ることが求められる。

 厚生労働省と川崎市による訓練では接種前の診断(予診)の際、ワクチンへの不安や持病についての聞き取りで流れが滞ることが判明。アレルギー反応の確認も含め、受け付けから退出まで1人30~40分かかった。

 政府は対象者への予診票の事前配布も検討。十分な説明とやりとりで不安を解消する仕組みをつくり、ぜひスムーズな接種を実現してもらいたい。

 人口規模によっては1自治体で1日千人近い高齢者に接種する必要がある。コロナ患者への対応で医療体制が逼迫(ひっぱく)する中、必要な医師らを確保できるのかどうか。市町村の枠を超えて協力し合う体制の整備が急務だ。

 移動手段の限られる高齢者がいる中山間地などでは、医師らが接種に出向く必要も出てくる。小規模自治体は事業の財源や人員が確保できないこともあり得る。進捗(しんちょく)状況が地域間で大きく異なるなど不公平感が生じることがないよう、政府は配慮しなければならない。

 各地域の実情を政府が積極的に聞き取り、ワクチン保管用冷凍庫や注射器などの資材だけでなく、財政面でも十分な支援をすることが必要だ。市町村がスムーズに準備を進められるよう、詳しい情報を小まめに提供することも欠かせない。

 国民の正しい理解を得ることも重要だ。接種により少数ながら急激なアレルギー反応が出るとの報告があるが、高い効果が見込まれている。先行接種している海外の事例に学び、万全の対策を政府と自治体で講じなければならない。ワクチン頼みに陥らないよう地道な感染防止対策も継続すべきだ。