社説:高齢者の就業 安心して働ける環境を

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 秋田労働局がまとめた2020年の高年齢者雇用状況調査によると、定年廃止や継続雇用などにより70歳以上が働ける県内企業は45・9%で、7年連続の全国1位だった。66歳以上が働ける企業も48・1%で全国1位。少子高齢化に伴う労働力不足が懸念される中、官民が高齢者雇用の環境づくりに長年取り組んできた成果と言える。

 元気な高齢者たちが仕事を続け、社会保障制度のサービスの「受け手」から「支え手」に回れば制度の持続性が高まることが期待できる。高齢者が長時間労働、低賃金など不当な待遇を受けないよう、安心して働ける環境の整備が求められる。

 15年の国勢調査によると、本県の就業者数は約48万人。00年に比べると約10万人減少した。高齢化の進展や若者の県外転出に伴う生産年齢人口(15~64歳)の減少が影響しているとみられる。地域や企業の活力を保つには、意欲のある高齢者に活躍してもらうことが重要だ。

 現在は65歳までの雇用確保が企業に義務化されている。4月には、70歳までの就業機会確保を努力義務とする「改正高年齢者雇用安定法」が施行される。

 企業は定年制廃止や70歳までの定年引き上げ、継続雇用、業務委託契約、企業が関わる社会貢献事業への従事―の五つの選択肢から選ぶことができる。

 業務委託契約と社会貢献事業の場合、企業と高齢者の間には雇用契約がなくなる。会社員ではなくなるため、労働法の保護を受けられない。働き過ぎを防ぐ労働時間規制や最低賃金の適用対象から外れるので、不利益が生じないような制度運用が欠かせない。

 多くの企業は、勤続年数や年齢に応じて賃金を引き上げる年功序列を採用している。再雇用の場合、それ以前と同じような仕事をしても賃金が大幅に減るケースがある。これでは高齢者側の労働意欲は高まらないことが懸念される。しかも4月から中小企業にも適用が始まる同一労働同一賃金制度で問題になる可能性もある。

 本県は高齢者が働ける企業は多いが、実際に働き続ける高齢者の割合は低い。17年調査では65歳以上の有業率は22・4%で、全国平均を2ポイント下回り42番目だった。いかに労働意欲を喚起するかが大きな課題だ。

 「高齢社員の経験が生かし切れない」「高齢社員の定着率が上がらない」などといった企業の相談については、独立行政法人「高齢・障害・求職者雇用支援機構」の秋田支部(潟上市)が受け付けている。ハローワークと合わせて積極的に活用し、高齢者雇用の道を探りたい。

 政府は将来的に70歳就業を義務化する方針。高齢者の就業が進むと、若い世代の雇用や賃金に影響する可能性もある。国、県など関係機関は今後、改正法の下での実態把握に努め、課題を解決しながら、高齢者の就業を定着させなければならない。

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