北斗星(2月4日付)

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 式典で生の歌声が響かないと何か味気ない。先日、県芸術選奨の表彰式に出席する機会があった。そこでは「君が代」と「県民歌」があらかじめ録音されたCDの演奏で済まされた

▼「新型コロナウイルス感染症対策のため、声を出して歌うことはお控えくださるようお願いいたします」。司会者にこう促された。マスクを着けた出席者は起立したまま静かに耳を傾けていた

▼学校でも大勢で「生歌」を歌えない状況が続く。校歌斉唱の場面がこの一年で減ったという。秋田市内の中学校の音楽教諭は1年生の心情を憂える。昨年4月の入学以来、せっかく覚えた校歌を全校で合唱する機会が失われた。うまく歌えるだろうかと

▼校歌は学校のシンボルといえる。分かりやすいのは甲子園の高校野球だ。勝利を祝福する校歌は選手を鼓舞し、古里を元気づける。ところが1981年、夏の大会に初出場した経大付高(現明桜高)が1勝目を挙げた際、肝心の校歌は歌われなかった

▼代わりに流れたのが秋田経済大の校歌だった。原因は主催者側の不手際。喜び勇んで整列したら聞き覚えのないメロディー。当時の本紙には戸惑う選手の写真が掲載された。お粗末なミスに発奮したのだろう。続く2回戦でチームは快勝。ナインは高らかに校歌を歌い上げた

▼校歌には愛校心だけでなく、愛郷心を呼び覚ます役割もある。しかし今は人前で歌うこと自体が難しい。我慢を強いられるが、歌そのものの力は決して衰えていない。

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