社説:航空社員受け入れ 民の視点、県政に生かせ

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 県は2021年度、日本航空、ANAホールディングス両社グループの社員を1年間受け入れる計画を進めている。観光振興や特産品販売などの分野で活躍できる人材を求めており、最大8人を受け入れる予定だ。

 新型コロナウイルスの感染拡大による旅客需要低迷で航空会社は大幅な減便を余儀なくされており、経営改善の一環でグループ社員を外部企業などに出向させる動きを加速。三重や佐賀など自治体も受け入れを表明している。本県は昨年11月に受け入れを表明、来月上旬にも人数や配属部署が決まる見通しだ。

 経済活動が停滞して社会が激変する中、県には前例にとらわれない柔軟な施策が求められる。航空グループ社員の受け入れは新たな発想を取り入れ、その経験や視点を生かす好機といえるだろう。

 県は受け入れ経費6400万円を21年度当初予算案に計上。各社に支払う1人当たりの県負担金は引っ越し費用を含め最大800万円。両社はこれを基に出向社員に給料を支払うことができ、雇用を維持しつつ人件費を節減できるのがメリットだ。

 ただし県はこの負担金の具体的な内訳を明らかにしていない。民間人の受け入れに税金を投入する以上、内訳や額の算出根拠を県民に分かるように説明することは不可欠ではないか。

 同時に、県として求める人材を確実に受け入れられるよう、会社側と十分に調整を図ることも必要だ。受け入れ終了後は、税金投入に見合う事業効果があったかどうかの検証も忘れてはならない。

 観光は確かに本県にとって大幅な立て直しが必要な分野だ。県外観光客が激減し、3密回避などの継続で今後も団体客誘致が難しくなる可能性がある。少人数で海や山の自然を楽しむ体験メニューを充実させるなど知恵を絞らなければならない。

 そうした状況を踏まえ、出向社員には本県旅行商品の方向性について積極的に提言してもらうべきだ。国内外の観光地に詳しい社員らの経験を生かし、コロナ禍でも楽しめる県内観光スポットを独自の目線で提案してもらいたい。従来気付かなかった新たな魅力の発見につながる可能性もある。

 特産品販売でも外からの視点を生かしたい。本県食材を使って国内外に売り込む土産品を考案してもらったり、販路開拓につながる独自の人脈を紹介してもらったりすることも可能だろう。語学や接客の得意な社員ら多様な人材がいるはずだ。配属部署の業務以外でも活躍できるよう県には配慮してほしい。

 航空2社の定期便は本県にとって極めて重要な交通手段だ。出向社員が県内に住むことは、県内2空港の路線存続の重要性を会社側に再認識してもらう機会になるに違いない。出向期間の終了後も秋田の魅力を発信してもらうなど、協力関係を継続することが求められる。

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