社説:ミャンマー政変 民意踏みにじる暴挙だ

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 ミャンマー国軍のクーデターが世界に衝撃を与えた。アウン・サン・スー・チー国家顧問やウィン・ミン大統領を拘束、民政移管から10年で軍政が復活した。民主主義を踏みにじる暴挙は許されない。両氏を解放し民政復活へ事態を収拾すべきだ。

 日本はミャンマーと歴史的に関係が深く、民主化や経済を支援してきた。民政移管後は「アジア最後のフロンティア」として各国から投資が活発化、日系企業は約400社が進出している。日本は民政復活を望む姿勢を明確に示さなくてはならない。スー・チー氏率いる国民民主連盟(NLD)と国軍双方にパイプを持つ強みも生かしてほしい。

 クーデターは1日未明に発生した。昨年11月の総選挙後初の国会招集日だった。国軍はスー・チー氏を自宅に軟禁したほか、NLDの議員ら数百人を拘束。1年間の非常事態を宣言し、ミン・アウン・フライン国軍総司令官に立法、行政、司法の全権が移譲されたと発表した。

 クーデターの原因は総選挙の結果に対する国軍の不満とされる。与党のNLDが圧勝し、野党で国軍系の連邦団結発展党は惨敗した。国軍は選挙で重大な不正があったと主張。調査が必要として議会招集の延期をNLDに求めたが決裂し、クーデターを強行した。

 しかし欧米や日本の選挙監視団は、選挙は公平だったと評価している。そもそも国軍は不正の具体的証拠を示していない。選挙惨敗による影響力低下を恐れ、クーデターに及んだのが実態ではないか。拘束後、スー・チー氏を無線機の不法輸入容疑で訴追したのも後付けの理由と指摘せざるを得ない。

 ミャンマーでは長く軍政が続いたが、2011年に民政移管された。さらに15年の総選挙でNLDが圧勝、事実上のスー・チー政権が誕生した。民主化運動の象徴的存在だったスー・チー氏だが、国家顧問に就いた16年以後、目立った成果はない。

 それは同国の上下両院の25%は軍人枠だからだ。国軍の政治的影響力を保証するこの現行憲法が足かせとなっている。国軍の政治関与を弱めようと、NLDは憲法改正を公約に掲げてきたが実現していない。17年に国軍がイスラム教徒の少数民族ロヒンギャを迫害した際、スー・チー氏は黙認し国際社会の失望を招いた。

 こうしたことから昨年の総選挙ではNLDの議席減も予想されたが、結果的には議席を増やした。国軍に対する民衆の抵抗の表れと言えよう。

 今回、軍政時代から後ろ盾となってきた中国は静観の姿勢。一方、バイデン米大統領は各国と連携して国軍への圧力を強める考えを示した。発足間もないバイデン政権にとって、外交のリーダーシップやアジア政策が問われている。日本を含め世界各国が結束し、民政復活へ働き掛けを強める必要がある。

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