北斗星(2月8日付)

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 コの字形のくぎを打ち込む。穴を開け、ボルトを通し固定する。裂けたり、折れたりした枝をくっつけて元に戻す方法だ。リンゴの産地、横手市で再生した木を見たことがある

▼大雪で傷ついた木を救いたい。その一心で手当てしたに違いない。リンゴ作りに懸ける農家の情熱を見る思いがした。不撓不屈(ふとうふくつ)の精神、新技術を取り入れる進取の気風、一致協力する協同の精神。これらがあったから産地になり得たという

▼この冬は何度も大雪が襲う。リンゴの木はどうなっているのか。60代の農家に聞いた。「『津波』のような雪が4度も押し寄せて来た。妻と掘り上げているが、完全に折れた枝はもう再生できない」

▼雪を1メートル以上スコップで掘り、埋まった枝を上へ出す。この掘り上げをやらないと大変なことになる。気温が上がると雪は締まって沈み込む。下へ向かう重い塊の力で埋もれた枝が折れるからだ。ただ作業に行けない人もいる。家の周りの雪寄せで手が回らないようだ

▼別の60代農家が語る。「2011年の大雪被害から10年。みんな、年には勝てなくなってきた。このご時世で集まって情報交換するのもままならない」。それでも掘り上げに出向く。「まず枝を守らなければ」

▼雪があまりに多く、現状では被害の把握が難しい。全容が分かるのは雪が解けてからになる。横手に西洋リンゴが導入されて今年で145年。長い歴史に培われた産地を守るため、農家の思いに応えた行政の支援充実を望む。

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