社説:コロナ禍の民謡 若者への継承、知恵絞れ

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 新型コロナウイルス感染の収束が見通せない中、昨年は県内各地の民謡全国大会が全て中止された。今年も現段階で開催のめどは立っていない。自慢ののどを披露する機会を失った愛好者だけでなく、民謡を聴くのを楽しみにしていたファンにとってもやり切れない状況だ。関係者には秋田民謡の魅力を広く発信し、次世代に継承するために知恵を絞ってほしい。

 本県には「秋田おばこ節」「本荘追分」「生保内節」など民謡の全国大会が12あり、例年4月から11月まで毎月のように開かれてきた。全国大会は歌い手はもちろん、尺八や三味線の奏者が腕を磨く場にもなっており「民謡王国秋田」という全国的な評価を保つ力になってきた。

 だがコロナ禍により全国大会が中止されただけではない。民謡を歌い、演奏する機会そのものが大きく減少している。その影響は最小限にとどめたい。

 県内民謡界は昭和50年代前半までに、主にプロによる2団体とアマチュア主体の1団体が組織された。この3団体が結集し、1980年に設立されたのが県民謡協会である。さまざまな大会の開催に携わり、秋田民謡の発展を長くけん引してきた。

 だが近年は娯楽の多様化など社会情勢が大きく変化。高齢化に伴う愛好者の減少に歯止めがかからない。少子化も著しく、秋田民謡をどう若い世代に伝えていくかが大きな課題だ。

 こうした中、秋田市の民謡プロダクションが作成した民謡のPR動画が注目されている。県の補助金を活用。一線で活躍する民謡歌手が秋田民謡など13曲を昨年夏に収録した。動画投稿サイト「ユーチューブ」で公開したところ、これまで1万7千回以上再生された。

 動画はパソコンやスマートフォンで気軽に視聴できる。年代や地域を問わず幅広い人たちに秋田民謡の魅力を発信するには絶好の手段と言える。県民謡協会などが中心になり、より多くの歌い手や民謡を紹介する取り組みができないだろうか。

 一方、子どもたちが生の民謡に親しむ機会は限られている。これまでも各地の指導者は小学校などに出向き、民謡を披露したり、歌を教えたりしてきた。

 だが地域によって温度差があり、受け入れ態勢が十分とは言えない学校もある。県民謡協会と県教育委員会や各市町村教委、学校が連携して継承活動を全県で展開するなど、新たな取り組みを期待したい。

 秋田民謡は本県の大切な伝統文化である。明るい旋律の歌が多く、地域の歴史や風土、暮らしに根差している。農業や林業、鉱業に関わる素朴な作業唄や祭りや祝い事、宴席で歌われるものなど、多彩な内容が特色の一つに挙げられる。

 歌詞には農家の生活など昔ながらの人々の営みや古里の風景が織り込まれている。歌詞の意味やその背景にある文化などもしっかり伝えていきたい。

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