社説:わらび座創立70年 コロナ後見据え挑戦を

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 仙北市の劇団「わらび座」があす19日、創立70年を迎える。本県の芸術文化の向上に大きく貢献してきただけでなく、地域経済の活性化にも欠かせない存在となっている。

 現在は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、極めて厳しい経営状況にある。それでも、地元のわらび劇場で感染防止対策を講じたミュージカル公演を行うなど、挑戦を続ける姿勢にエールを送りたい。

 わらび座の全国ツアーは例年、500回を数える。だが昨春以降、コロナ禍で公演の多くが延期や中止に追い込まれた。2020年度は回数、売り上げとも7割減の見通しという。

 「あきた芸術村」(同市田沢湖)では劇場をはじめ、温泉、ホテル、レストランを運営し、修学旅行生の受け入れや地ビール製造なども行う。しかし修学旅行生の受け入れは前年度比7割減の3千人にとどまり、レストランも休業を余儀なくされている。

 こうした中でも昨年6月には、休演が続いていたミュージカル公演を3カ月ぶりにわらび劇場で再開。観客100人規模の公演を全国に先駆けて成功させた。20年度は四つの新作を含むミュージカル6作品を各地で上演した。

 わらび座の社是は「衆人愛敬(しゅにんあいぎょう)」。能楽の大成者、世阿弥の「風姿花伝」にある言葉だ。劇団創設者の作曲家・原太郎は「人々に愛され、理解されてこそ芸の道は成り立ち、劇団は存在し得る」とし、座の理念とした。

 コロナ禍で制約の多い公演でも、観客は熱演に大きな拍手を送った。座員たちはこの理念を再認識したに違いない。感染収束への道筋はいまだ不透明だが、舞台芸術を通じて多くの人に感動を与える活動を今後も継続してほしい。

 公演以外にも新たな取り組みがある。その一つがワーケーションだ。ワーク(仕事)とバケーション(休暇)を合わせた造語で、旅先で休暇を楽しみながら働くことを指す。

 テレワークの普及に伴い、全国各地でワーケーション誘致の機運が高まっている。その一環として、わらび座は感染拡大以前から準備を進め、昨年2月、旅行者向けのオフィスを芸術村に開いた。県内でも先駆的な取り組みと評価できる。

 舞台映像のオンライン配信も積極的に推進。ファンとのつながりを保ち、これまで関心がなかった人たちにわらび座を知ってもらう契機となるだろう。コロナ後を見据え、地道に発信を続けることが大切だ。

 わらび座のルーツは1951年2月19日に都内で旗揚げした楽団「海つばめ」。工事現場の労働者を歌と演奏で慰労した。53年に民謡の宝庫である本県に移って以来、地域に根を張り歴史を刻んできた。節目の年を機に、全国から人を呼び込む力に磨きをかけ、地域の活性化に寄与してほしい。

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