北斗星(2月18日付)

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 「3万年分の出来事が記された分厚い本」。男鹿市の一ノ目潟で採取された「年縞(ねんこう)堆積物」について、秋田大大学院教授の林信太郎さんがこども新聞でこう解説していた。年縞はプランクトンの死骸や黄砂、花粉などが湖底にたまってできた縞(しま)模様のこと。一ノ目潟では1年に1枚の縞ができ、3万枚も積み重なった

▼内容物を調べると気候変動や災害の履歴を明らかにできる。まさに壮大な歴史書だ。県文化財保護審議会は今月、この年縞を県天然記念物に指定するよう答申した

▼年縞調査の第一人者から13年前に話を聞いたことがある。「3500年前に気候が寒冷化し、冷涼湿潤を好むスギが繁茂した」「菅江真澄は1810年、水位の下がった一ノ目潟の絵を描いた。実際、当時は降水量が少なかった」。初めて聞く歴史秘話に心が躍った

▼縞模様の形成には湖が深く、湖底がかき混ぜられないなど条件が幾つもそろう必要がある。そうした湖は珍しく、「ここの年縞は世界でも類を見ないほど美しい」と研究者は絶賛していた

▼一帯の自然環境はそれだけ希少性が高いということだ。審議会は「(年縞は)堆積物を可視化し、過去の環境情報を見て取ることができる貴重な資料」とする

▼今の時代はどんな物質が堆積するのか。至る所で見掛けるプラスチックの破片か、核実験や原発事故で拡散した放射性物質か。年縞は過去だけでなく、現代の人間の営みもいずれ可視化する。その縞模様は美しいのだろうか。

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