社説:総務省幹部更迭 事実関係の調査徹底を

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 放送事業会社に勤める菅義偉首相の長男らが総務省幹部と会食を繰り返していた問題で、同省の前局長が会食時に衛星放送事業に関し発言したことを認めた。また長男について、接待を受けることが禁じられている利害関係者であるとの認識を明らかにした。接待により放送行政がゆがめられたのではないかとの疑惑は一層深まった。

 総務省は前局長ら2人を事実上更迭。2人を含む幹部4人の懲戒処分を視野に、早期の収拾を図る。しかし、菅首相に配慮した組織ぐるみの対応だったのではないかとの疑念は払拭(ふっしょく)されていない。総務省は徹底的に調査した上、事実関係と責任の所在を明らかにするべきだ。

 長男は菅首相が総務相だった時代に秘書官を務めた。その後、放送事業会社に就職、総務省から衛星放送事業者の認定を受ける子会社の役員も務める。

 総務省によると、幹部4人が長男らと会食したのは2016~20年に延べ12回に上る。タクシーチケットや手土産を受け取っていたこともあった。

 週刊誌報道を受け、総務省は内部調査に着手。だが、長男らの接待目的や総務省幹部が誘いに応じた理由、会食費用の負担割合などは不明なままだ。

 会食が集中した昨年10~12月は衛星放送事業者の認定の更新時期。前局長は許認可権を持つ衛星放送の話題が出たかどうかについて「記憶にない」と国会で答弁していた。

 週刊誌側が会食の際の長男や前局長の発言を録音したとする音声をインターネット上で公開すると、前局長は発言があったことを認めた。これまでの国会答弁は「虚偽」だったのか。

 国家公務員倫理法に基づく倫理規程は、省庁の許認可を受ける事業者を「利害関係者」と定め、国家公務員が金銭・物品の贈与や接待を受けることを原則禁じている。総務省はこれまでも長男が利害関係者に当たる可能性があるとしていた。前局長自身が、利害関係者と会食し放送事業について発言したことを認めた事実は重い。

 前局長は同業他社の関係者との会食はなかったとしている。長男らによる接待の異例さが際立つ。会食に誘われ断らなかったのは、いまだに総務省内に大きな影響力を持つとされる菅首相の長男が相手だったからではないかとの疑いは拭えない。

 菅首相は長男について「別人格」などと述べ、接待問題は自身と無関係であることを強調している。しかし元秘書官でもある長男が倫理規程に反する行為に関わっていてもなお、道義的責任がないと言えるだろうか。

 長男が勤める放送事業会社の元社長らは12~18年、菅首相に対して計500万円を献金している。首相と長男、放送事業会社、総務省の間に不透明な関係がなかったかとの疑問も生じかねない状況だ。菅首相と総務省は事実関係を明らかにし、説明責任を果たすべきだ。

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