北斗星(2月23日付)

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 北秋田市七日市の山あいにある葛黒(くぞぐろ)集落の小正月行事「火まつりかまくら」は奇祭である。例年なら市内外から訪れた見物客でにぎわうが、今年は新型コロナウイルスに配慮して地元住民だけで行われた

▼極端な暖冬だった昨年は直前に会場を変更するなど地元の苦労はひとかたならぬものがあった。今年は雪不足の心配は無用。地域の結び付きの大切さを改めて確かめ合えたのではないか

▼祭りの主役は県南のかまくらに欠かせない雪室ではなく、会場に運び込まれた高さ10メートルほどの神木である。稲わらや豆殻を巻き付けてから立ち上げ、夕闇迫る中で火を放つ。神木が燃え上がる様は迫力十分だ

▼これだけなら、他地域のどんど焼きとあまり変わらないかもしれない。ユニークなのは、人々が神木に向かって「おーい、かまくらのゴンゴロー」と叫ぶことだろう

▼ゴンゴローは平安後期の後三年合戦で名をはせた鎌倉権五郎景政(かまくらごんごろうかげまさ)のこととする説もある。重傷を負いながら源氏の勝利に貢献した伝説の猛者である。歌舞伎十八番の「暫(しばらく)」にも同じ景政が登場する。こちらは悪人に殺されかかった善男善女を危機一髪で救うヒーローだ

▼かつては主要街道から外れていた集落に、どんな経緯でかまくら行事が受け継がれてきたかははっきりしない。だが伝説には人々を苦しみから救う超人的な力への信仰が息づいている。今年はコロナ禍を収束させ、早く元の暮らしを取り戻したいという切実な願いも託されたことだろう。

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