社説:鹿角の新電力休止 再開へ経営安定策探れ

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 鹿角市などが出資する地域電力小売会社「かづのパワー」が今月、売電事業を休止した。電力の「地産地消」による地域活性化を掲げ、昨年4月から市内の公共施設に供給していたが、電力市場の高騰で調達価格が販売価格を上回る状況が続き、事業継続が困難になったためだ。市などは一時、解散も検討したが、補助金を交付して会社を存続させた上で事業再開の可能性を探る方針だ。

 今回の市場高騰は前例がない水準で、事前に想定するのは難しかったかもしれない。だが休止という重大な結果に至ったことは、リスクへの備えが不十分だったと言わざるを得ない。休止までの経緯を検証し、市民に丁寧に説明する必要がある。

 電力小売りの段階的な自由化で、全国各地に新規参入の小売会社(新電力)が設立され、工場などに加え一般家庭も電力の購入先を選べるようになった。新電力は自前の発電所を持たない場合、電力市場から調達するなどして販売。かづのパワーは市内の53公共施設に供給し、民間にも拡大する計画だった。

 地域で生まれた電力を地域で販売できれば、従来は地域外に流出していたお金を循環させ、地域づくりにつなげることができる。同社が掲げるこうした視点は人口減が進む中、今後ますます重要になるだろう。

 東北経済産業局も、地域に根差した新電力同士の連携を図ろうと動きだしている。まちづくりや地域課題の解決、新産業の創出などに役立てる狙いだ。

 本県は水力や地熱など再生可能エネルギーに恵まれており、それを活用しない手はない。市と同社には市場リスクを回避しつつ、より安定的に経営できる方策を追求してもらいたい。

 今回の高騰は昨年12月中旬から今年1月にかけ、寒波による需要増大と火力発電燃料の液化天然ガス(LNG)の国内在庫不足が重なるなどしたためだ。市によると、それ以前は1キロワット時当たり月平均5~7円で推移していた調達価格が急騰。年明け以降は日平均が160円を超えることもあった。異常な高騰ぶりだったことがうかがえる。

 地域の新電力が発電主体と直接契約できれば、電力調達を卸市場にのみ頼るリスクを緩和できる。鹿角市は同社の営業開始前の2019年1月、市内の県営水力発電所からの電力購入に関し県に要望書を提出したが、実現しなかった経緯がある。

 経営の安定化を図り、「地産地消」を促進する上で、県営水力などから定額で電力を調達できる意味は大きい。かづのパワーに限らず、地域活性化の観点から、県などには柔軟な対応を求めたい。

 また、市と同社は自前の電源の確保も目指すべきだ。固定価格買い取り制度(FIT)の適用年限を終えた家庭の太陽光発電から積極的に電力を買い入れるなどの方策を検討し、安定経営の道を探ってほしい。

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