社説:接待総務官僚処分 首相責任で徹底解明を

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 放送事業会社「東北新社」による接待問題で、総務省は事務方ナンバー2の総務審議官ら官僚9人を減給、戒告の懲戒処分、2人を訓告処分などとした。「利害関係者からの接待」を禁じた国家公務員倫理規程に違反したのが理由だ。

 接待したのは同社勤務で子会社役員を兼ねる菅義偉首相の長男・正剛氏ら。会社側は何の目的で接待を繰り返したのか。官僚はなぜ応じたのか。核心部分の疑問は解けていない。

 同業他社による同様の接待はなかったとされ、創業者が本県出身である東北新社と同省の特別な関係が際立つ。元社長らが菅首相側に献金していた経緯もあり、疑念は深まるばかりだ。

 菅政権への国民の不信感も募らざるを得ない。同省は許認可権を握る監督官庁として、子会社の衛星放送を認可している。一部の接待は認可の更新直前に集中していた。行政の判断がゆがめられたことは本当になかったのかどうか。

 同省は副大臣をトップとする検証委員会を設置、放送行政に影響がなかったかを調べる。政権の責任として徹底検証するのは当然だ。ただ内部調査には限界がある。第三者の視点を十分取り入れ、公正で透明性のあるものとしなければならない。

 同省によると計13人が接待を受けていた。2016年7月~20年12月、延べ39件行われ、同社は計60万円余を負担。正剛氏はうち、21件に参加していた。

 額が最も多かったのは有力事務次官候補とみられていた谷脇康彦総務審議官の約11万8千円(計4回)。現内閣広報官の山田真貴子氏は総務審議官当時の19年、1回7万円超の接待を受けていた。処分では官僚1人を利害関係がなかったとして除外。同省を退職している山田氏は給与の一部を自主返納する。

 理解し難いのは、正剛氏らが「利害関係者」との認識はなかった―と官僚が口をそろえた点にある。接待を申し出た相手や出席予定者の肩書を慎重に調べれば、利害関係者か否かはすぐに分かったはずだ。

 その確認もせずに接待を受けたとすれば、あまりに不用意だろう。幹部の行為として信じ難い。本人がいくら否定しても、首相の長男のいる会社であるが故に「忖度(そんたく)」したと見られても仕方がないのではないか。

 正剛氏は菅首相の総務相時代に秘書官を務めた経緯がある。東北新社に入社する際には「総務省とは距離を置いて付き合うよう言った」と、菅首相は国会で答弁。同省幹部との度重なる会食に「驚いた」と述べた。

 一連の接待を見ると、正剛氏は同省との距離を「縮める」役割を担っていたようにも映る。秘書官という経歴や父親の威光を利用していた側面はなかったのか。長男は「別人格」とはいえ、菅首相には政治責任がある。正剛氏への調査も含め、指導力を発揮して事実関係を徹底して明らかにすべきだ。

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