社説:病院内クラスター 感染対策に万全を期せ

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 県内二つの公立病院内で新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)が発生した。いずれも既に「終息」が宣言されたが、外来診療の休止などで地域住民に大きな影響が及んだ。浮かび上がった課題をしっかり検証し、今後の感染防止対策に生かさなければならない。

 秋田市の市立秋田総合病院でスタッフと入院患者のコロナ感染が発表されたのは1月16日。県内の医療機関では初めてのクラスターとなった。一般外来と救急外来、新規入院などの受け入れを停止。感染リスクに応じて院内を区分けする「ゾーニング」や、スタッフと患者への検査などの対策を重ねたが、陽性者は計52人まで広がった。

 1月22日には横手市立大森病院でクラスター発生が確認された。一般外来や救急外来を休止する措置が取られたが、こちらも計15人に感染が拡大した。

 秋田市保健所が行った市立病院の立ち入り調査では、職員の健康管理や面会の状況、器具や備品の管理などで、感染対策の不十分さが指摘された。大森病院のケースでは県医師会が、入院患者の在住地の保健所に初期対応の遅れがあったと指摘した。関係者がこうした指摘を重く受け止め、対策に一層の努力を払うよう期待したい。

 国内最大規模の病院内クラスターが発生したのは埼玉県戸田市の戸田中央総合病院。昨年11月に職員の感染が明らかになって以来、2カ月余りで陽性者は300人を超えた。

 新規の外来や救急外来の受け入れを長期間にわたり見合わせたため、救急患者が近隣自治体へ搬送される例が増えるなど地域医療に大きな影響が出た。「医療崩壊」という最悪の事態が想定される状況だった。

 厚生労働省クラスター対策班の指摘によると、病院内では標準的な感染予防策が行われていた一方、職員休憩室やロッカーでマスクを外したまま会話するなどの問題点も浮かんだ。目に見えないウイルスとの闘いは、わずかな隙が重大な結果につながりかねないことを再認識させられる。

 本県でのクラスター発生を巡っては、病院関係者に対して向けられた差別行為や誹謗(ひぼう)中傷も問題となった。病院関係者によると、「病院に入っただけで感染する」といった誤った情報が広まったほか、「医療関係者の家族がどうしてスーパーに買い物に行くのか」といった苦情が寄せられた。

 感染が拡大している状況下では、誰もが感染する可能性がある。医療機関や医療従事者に対する誹謗中傷など、あってはならない行為だ。

 クラスター発生で外来受け入れなどが停止されたことで、病院の大切さを改めて実感した住民は多かったはずだ。コロナ禍の中でも医療体制を維持するためには、医療関係者の努力だけでなく、住民の理解、協力も重要であることを肝に銘じたい。