北斗星(3月2日付)

お気に入りに登録

 久しぶりに友が訪ねて来る。テーブルには心尽くしの手料理。学校時代の思い出や近況を語り、しばらく会っていなかった空白の時間を埋める。ただ楽しい時を過ごしてほしい。それがもてなす際の気持ちだろう

▼ただし特別な狙いがあってのもてなしもある。約200年前、フランスの政治家ブリア・サヴァランは「食事は政治の手段」とずばり指摘。「人民の運命は宴会において決せられた」と著書「美味礼讃」で書いた

▼その歴史に触れ、さらに説く。供応する者とされる者の間に食卓はつながりを生み出す。その結果、会食者はある種の影響を被りやすい―。同じ食卓を囲むと確かに心が通じ合う。相手に影響力を行使しやすくなるということだ

▼霞が関官僚らと民間人が飲食する場合はどうか。放送事業会社東北新社の接待問題で総務官僚11人が減給処分などを受けた。総務省幹部時代、1回7万円超の接待を受けた内閣広報官は辞職。同社部長で子会社役員だった菅義偉首相の長男正剛氏らが供応していた

▼会食の音声データを聞いた。専門用語をポンポン使って話が弾む。付き合いの深さを思わせる。子会社の衛星放送の許認可権を握る監督官庁、菅氏の総務相時代に秘書官だった長男ら。一線を画すべき両者は「特別な関係」にあったのではとの疑いが残る

▼一連の接待によって行政がゆがめられたことはなかったのか。それが問題の核心だ。「食事は政治の手段」との言葉を振り返る時、疑念は強まる。

秋田の最新ニュース