社説:孤独・孤立問題 急がれる命を守る対策

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 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う自粛生活の長期化で、孤独・孤立の問題が深刻化している。昨年の国内の自殺者数は11年ぶりに増加した。政府は省庁横断でこの問題に取り組む姿勢を示している。

 菅義偉首相は先月、坂本哲志1億総活躍担当相に孤独問題の担当を兼務するよう指示。内閣官房に厚生労働省や文部科学省などの職員による「孤独・孤立対策担当室」を新設した。夏に策定する経済財政運営指針「骨太方針」に対策を盛り込む。国民の命に関わる問題である。必要とされる対策については前倒ししてでも実行を急ぎたい。

 民間の支援団体代表らを招いて開かれた緊急フォーラムでは、出席者から相談窓口の強化を求める意見などが寄せられていた。相談業務への支援を早急に行う必要がある。

 全国の自殺者では女性と小中高生の増加が著しい。男女共に孤独感が原因の事例が増えている。若者向けには電話のほか、インターネットを通じた相談も有効とされる。その充実を図らなくてはならない。

 孤独問題に地道に取り組んできた団体やボランティアが今後も対策の主役となろう。そうした団体や個人の力を引き出すのが国の役割。予算面でしっかり支えることが期待される。

 海外に目を向ければ、国が取り組む孤独対策として英国の先例がある。孤独が健康に悪影響を及ぼすとして2018年に「孤独担当相」を設置。孤独をなくすことを政府の目標とした。日本に限った問題ではないことが分かる。

 菅首相は「自助・共助・公助、そして絆」を基本理念に掲げるが、「まずは自助」が持論とされる。1月下旬の参院予算委員会ではコロナ禍の影響を受ける生活困窮者の支援を巡って「生活保護という仕組みもある」と答えて批判を浴びた。

 今回の孤独対策が打ち出されたのは同委員会での野党の質問がきっかけだった。菅首相は先のフォーラムで「絆のある社会を目指す」「助け合いながら生きていける社会の構築が重要」と強調している。

 菅政権は安倍前政権と同様に経済、コロナ対策の両立を目指してきた。経済的打撃が深刻な事業者や雇用を守るための支援の大切さはいうまでもない。一方、感染拡大局面で政府の需要喚起策「Go To キャンペーン」を推進するなど時として経済対策への偏重も目立った。

 今回は経済重視とは一線を画した姿勢がうかがえる。国民の直面する孤独・孤立という社会問題に国を挙げて取り組む覚悟を示してほしい。

 ただ現状では深夜の飲食や接待問題などで政治家や官僚に対する国民の信頼が大きく損なわれている。まずは信頼回復が急務だ。その上で苦境にある一人一人の悩みに国が目を向けているとのメッセージを届け、着実に支援を実行してもらいたい。

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