社説:大震災10年・福島第1原発事故 主要電源、依存脱却図れ

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 東日本大震災に伴い発生した東京電力福島第1原発事故から10年になろうとする今も、福島県内の被災地の復興は遠い。原子炉の廃炉は緒に就いたばかりで、県内外で避難生活を続ける住民の帰還も容易ではない。

 国策として原発建設を進めてきた国と東電の責任の重大さは言うまでもない。一日も早く廃炉を完了し、希望者の帰還をはじめ、住民の生活再建を支援していかなければならない。同時に国は、依然として原発を主要電源の一つに位置付ける政策を抜本的に見直し、「脱原発依存」を進めるべきだ。

 原発周辺の7市町村には今も原則立ち入り禁止の帰還困難区域が残る。約3万6千人が県内外で避難生活を続けている。

 炉心溶融を起こした1~3号機の廃炉に関しては、増え続ける汚染水を浄化した後の処理水の処分問題や最難関である溶融核燃料(デブリ)の取り出しなどの課題が山積している。デブリは総量880トンとの推計があり、専門家からは全量取り出しは難しいとの意見もある。今年中に2号機で初の取り出しを始める予定だったが、作業用のロボットアーム開発が遅れ、来年以降に延期された。

 政府と東電は2041~51年の廃炉完了を目指している。放射線量が高い環境下での作業には技術的な困難が伴う。目標通りに進むかは不透明だ。

 処理水を保管するタンクは千基超。東電は敷地内にタンクを新設する余裕はないとし、22年秋以降に計約137万トンの容量が満杯になると予想。政府は昨年、海洋放出を決定しようとしたが、風評被害を懸念する地元の反対などを受け見送った。ひとたび事故が発生した際の被害の大きさや復興の困難さを見れば、今後もエネルギーを原発に依存するのは危うい。

 世論調査によると、原発は将来的にゼロとするべきだと答えた人は68%、今すぐゼロと答えた人は8%で、計76%が脱原発を志向。再び深刻な原発事故が起きる可能性があると答えたのは90%で、原発への不安はなお根強いことが明確になった。

 政府の現行の「エネルギー基本計画」は、30年時点の電源構成を「原発20~22%」とする目標を掲げる。国民の意識とのずれが大きい上に、事故後、全国の原発33基のうち再稼働しているのが9基という現状を踏まえると、専門家の間でも達成困難とする見方が強い。政府は再考を急ぐべきだ。

 事故から10年の節目を前に東電や原子力規制庁は、国民の信頼を損なう失態を繰り返している。柏崎刈羽原発(新潟県)で所員が同僚のIDカードで中央制御室に入った不正と、福島第1原発の地震計を故障したまま放置していた問題などだ。

 いずれも東電と規制庁の安全に対する姿勢を疑わせるに十分だ。山積する課題を解決するためには、信頼回復に真摯(しんし)に取り組まなければならない。

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