社説:大震災10年・国の復興政策 ソフト面の支援を急げ

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 国内観測史上最大のマグニチュード9・0を記録、戦後最悪の自然災害となった東日本大震災の発生から、きょうで10年となる。黒ずんだ巨大津波が東北の太平洋沿岸部を襲った映像の記憶が生々しくよみがえる。

 津波などで1万5900人の命が奪われ、行方不明者は2525人に上る。東京電力福島第1原発では事故が発生。国際尺度で最も深刻な「レベル7」と評価される過酷事故となり、原発の「安全神話」を崩壊させた。全国では今も約4万1千人が避難生活を続ける。

 国はこの10年間、復興基本法の下で復興政策を進めてきた。この基本法は「単なる災害復旧にとどまらない活力ある日本の再生を視野に入れた抜本的な対策」を基本理念に掲げ、「一人一人の人間が災害を乗り越えて豊かな人生を送ることができるようにする」とうたう。

 実際の復興事業はどうだったか。国が投入した予算は計30兆円超。その内容を見ると、インフラ整備などハード面に偏っているように見えてならない。

 岩手、宮城、福島の被災3県では計画された災害公営住宅が全て完成。巨大な防潮堤も出来上がった。青森県八戸市と仙台市を結ぶ復興道路は年内に全線が開通する予定だ。高台への集団移転事業も順調に進む。

 一方で3県の被災市町村は人口減少に苦慮。震災直前に比べると計38万人以上が減った。

 災害公営住宅などで独り暮らしをしていて死亡した人は3県で614人。約7割を高齢者が占め、多くは誰にもみとられなかった「孤独死」とみられる。

 同じ仮設住宅からの入居者がおらず人付き合いが絶えた、大規模な高層住宅のため外から中の住民の様子が分からない―などの理由で孤立したようだ。

 コミュニティーが十分形成されず、人とのつながりを失って孤独死に至ったということだろう。国や自治体は「ハコモノ」建設を優先するあまり、自治会支援などコミュニティーづくりを軽視したのではなかったか。

 同様の事態を二度と引き起こしてはならない。入居者同士のつながりを深めるソフト面の取り組みを急ぐべきだ。

 3県の漁業も深刻だ。漁協組合員は合計で4分の1近くが減少。自宅や漁船の流出、原発事故の避難で継続を諦めたとみられ、高齢化も拍車を掛ける。

 こうした現実を前にすると、10年間の国の復興政策は、「一人一人が豊かな人生を送ることができるようにする」という基本理念の実現からは程遠い。

 菅政権は2021~25年度の復興事業を福島に重点化。岩手、宮城など津波被災地では心のケアや産業再生に力を入れる。

 事故原発を抱える福島と、それ以外の被災地とで対応が異なるのはやむを得ないが、これまでの復興政策の徹底検証は不可欠だ。国は各地域の実情に即したきめ細かな政策を強力に推し進めなければならない。

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