社説:大震災10年・国土強靱化 防災へ一極集中是正を

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 東日本大震災から10年の節目を迎えた被災地では追悼行事などが行われ、遺族らは犠牲者を悼むとともに再生の歩みを進めていくことを誓った。県内にあっても家庭や職場で黙とうをささげた方々がおられるだろう。

 先月13日深夜、宮城、福島両県で震度6強を観測する地震が発生した。これを東日本大震災の余震とみる専門家もいる。廃炉作業が行われている東京電力福島第1原発の被害を案じた人もいたのではないか。10年の歳月が過ぎても大震災は過去のものではないと思い知らされる。

 東日本大震災後も2016年の熊本地震など日本列島の揺れは止まらない。南海トラフ巨大地震、首都直下地震などの懸念も高まる。海底が震源なら津波の恐れがある。陸地では活断層の直下型地震が要警戒だ。

 世界有数の地震国・日本で原発を稼働するリスクが小さいはずはない。過酷事故からくむべき教訓はまだあるはずだ。

 地球温暖化を背景に従来の規模を超える台風や豪雨による被害も相次ぐ。そうした中で国の防災対策は着実に進んでいるのだろうか。

 防災・減災を進めるため、13年に国土強靱(きょうじん)化基本法が制定された。今後5年間では15兆円規模の事業が実施される。風水害や大規模地震対策、トンネルなどの老朽化対策などが柱だ。

 ここで言う強靱化は「災害に強くしなやかに対応すること」の意味。人命を守ることが第一であることはいうまでもないが、大規模災害からの被害を最小化し、迅速に復旧・復興を図ることも目指している。

 ところが国土強靱化には巨額予算を投じて大型公共事業を実施するイメージが強い。防災に耐震改修、堤防強化、避難所充実などが必要であることに異論はないが、本来の趣旨とずれ、ハード整備偏重になっているとすれば残念なことだ。

 災害リスクを対策でどれだけ低減できるかを明確に示す必要がある。国にはその効果について丁寧な説明を求めたい。

 強靱化に巨額費用を投じ続ける予算が無尽蔵にあるはずはない。国と地方の長期債務残高は21年度末に1200兆円を超え国内総生産(GDP)の2倍以上になる。防災のため債務が膨らみ続けるようなら、いざというときの財源が不安になる。

 大災害に備えて復旧・復興に必要な財源を確保できる財政的な余裕を残すことが本来の姿だろう。基金を積むなどできれば安心感が得られるはずだ。

 発生が懸念される南海トラフ、首都直下の二つの地震はいずれも太平洋側だ。強靱化を長期的に考えるとき、日本海国土軸などの多軸型国土形成も重要な視点だろう。

 防災面からも東京一極集中の是正を推進することが必要だ。過密地域で拡大する新型コロナウイルスなどの感染症は今後も繰り返される恐れがある。今こそ着手すべき時機ではないか。

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