社説:県内郷土食の調査 食文化、価値継承の機に

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 県教育庁は県内にある郷土食の実態調査に乗り出す。県民にとって身近過ぎて、その大切さが見過ごされがちだった郷土食の価値を明らかにするのが狙いだ。期間は2021~23年度の3カ年。食の多様性が失われつつある中、秋田ならではの食文化を再評価し、次世代に引き継ぐ契機としたい。

 スーパーやコンビニで総菜を購入するなどして食生活が均一化。作り手の高齢化などもあって郷土食に触れる機会が少なくなってきた。本県も例外ではない。どこでも一定の味を楽しめる半面、その土地になじみ深い食に出合う機会も減った。今回、初の調査に乗り出すのはこうした背景がある。

 海と山に囲まれ、多彩な食材に恵まれた本県には豊かな食文化が根付いている。きりたんぽ鍋やしょっつる鍋、いものこ汁など県北から県南まで特徴的な鍋物があるほか、いぶりがっこに代表される発酵食など特色ある郷土食がそろう。まずは広く情報収集し、全体像を把握しなければならない。

 計画では学識経験者や文化財関係者らによる調査委員会を設置。旧69市町村単位に分けて400カ所の食を一覧表にまとめた上で、特に地域色の強い食べ物を20程度に絞り、調理法や歴史的な背景を記録する。郷土食には正月や祭りなどで提供される特別な料理もあり、住民生活とどう関わっているのかもぜひ盛り込んでほしい。

 日本の食文化については13年に「和食」が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録され、国内外の関心が高まった。文化庁も海外への情報発信に力を入れている。

 郷土食や娯楽、玩具、わらべ歌などの「生活文化」分野はこれまで文化財として扱われることが少なかった。本県には国の重要無形民俗文化財が17件あり、全国で最多だ。今回の調査を通して郷土食の価値をあらためて見いだし、次の文化財指定を目指してほしい。

 県教育庁は調査結果を報告書にまとめ、各市町村や図書館などに配布する。それだけでなく、学校教育と連携して子どもたちの食育に生かすことも不可欠だ。先人から伝えられた郷土食を知ることは古里の歴史に理解を深め、魅力を再発見することにもつながる。教員には報告書の内容をかみ砕き、分かりやすく教える工夫が求められる。

 郷土食を受け継いできた担い手は高齢化が進む。食事を作ることがなくなれば下の世代が味わう機会も減り、作り方もいつしか失われてしまう。そうしたことを防ぐ意味でも調査は意義深い。映像記録を残すことも前向きに考えたい。

 食事は人が生きる上で欠かせない営みだ。郷土食は地域性や各家庭の作り方を反映し、豊かで独自の食文化を生み出してきた。郷土食という貴重な財産を記録し、継承することは現世代の責務と言うことができる。

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