社説:五輪聖火リレー 感染防止へ柔軟対応を

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 東京五輪の聖火リレー開始まであと1週間となった。25日に福島県のサッカー施設「Jヴィレッジ」(楢葉町、広野町)からスタートする。全国859市町村で約1万人が走り、121日間続く一大イベントである。

 リレーがきっかけで新型コロナウイルスの感染が拡大するようなことがあれば、五輪開催の可否にも影響しかねない。感染症対策は最重要課題だ。

 大会組織委員会は「3密回避」を基本とした対策の詳細を公表している。聖火ランナーは2週間前から会食を控え、体調管理表を提出。沿道の観覧者はマスクを着用し、大声を出さずに拍手で応援する―などの注意事項の順守を呼び掛けている。

 昨年は感染拡大により、聖火リレーがスタートする2日前に五輪・パラリンピックの延期が決まった。現在は感染者数が減少傾向にあるとはいえ、昨年春の最初の感染拡大期の水準を上回っている。

 懸念されるのは英国、南アフリカ、ブラジルなどで確認された変異型の感染者が国内でも出ていることだ。従来型よりも感染力が強いとされ、「第4波」を引き起こしかねない。

 聖火リレーの運営スタッフは400~500人と見込まれ、チームで全国を回る。ランナーにもスタッフにも観覧者にも、感染リスクが大きい状況となりやすい。

 聖火は本県では6月8、9日の2日間、14市町村を回る。聖火リレーは開催地以外で五輪を最も身近に感じられる機会であり、機運を高めるという大きな役割がある。無事に終われば大会開催に向けて大きな弾みがつくだろう。

 だがクラスター(感染者集団)が発生するようなら、五輪開催が危ぶまれる事態になる。組織委が聖火リレーを「リトマス試験紙」と捉えるのも当然だ。

 開幕まで約4カ月。著名人ランナーの辞退が相次ぎ、歓迎ムードが高まっているとは必ずしも言い難い。橋本聖子組織委会長は大会開催は決定済みとしながらも「国民に安心感を持っていただかない限り、開催は難しい。無理やり、何が何でも(開催する)との考えではない」と語った。前のめりに突き進みはしないという意味だろう。

 居住する都道府県以外での観覧は控えてもらうほか、沿道の密集を避けるため、インターネットのライブ中継の視聴を促している。過度の密集が発生した場合にはリレーを中断する可能性も示すなど、大会機運の盛り上げと感染防止の間で組織委の苦慮が続いている。

 1964年以来、57年ぶりの日本での夏季五輪となる。「希望の火」が全国に届けば素晴らしいことだ。一方で感染拡大は何としても避けなくてはならない。聖火は五輪のシンボルではあるが、感染防止が最優先だ。大会開催のためにも、状況によってはリレーの中止も含め柔軟に対応するべきだ。

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