北斗星(3月18日付)

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 滋賀県の琵琶湖で「深呼吸」が3年ぶりに確認されたと、先ごろ話題になった。酸素を多く含む表層の水が冷えて深層まで行き渡る「全層循環」という現象を、地元でこう呼ぶそうだ。一昨年と昨年は暖冬の影響で十分に循環せず、深呼吸に至らなかった

▼水は4度になると比重が最大になる。湖の表層水は春から初冬にかけては温度が高めに推移するため、比重が足りず深層には到達しない。冬場は寒気や季節風で冷えて深層に下がって行き、湖全体に対流が生じる。この働きで1年分の酸素が湖底まで供給されるという

▼深呼吸が滞れば酸欠状態となり、生き物が危機にさらされる。富栄養化でアオコが発生し、水道水に臭いが付く恐れもある。湖の環境は繊細なバランスで保たれているのだと再認識させられる

▼深呼吸は日本一深い田沢湖でも厳冬期に起こる。湖底まで酸素が届くことで多様な生き物の命が育まれ、固有種のクニマスも存在し得た。だが、1940年に玉川から強酸性の水が引き込まれ、希少な生態系は崩壊。取り返しの付かない事態となった

▼仙北市では昨年12月、「田沢湖再生ネットワーク」が立ち上がった。再びクニマスがすめる湖の再生を目指し、市と市民団体が機運を高めていくという

▼水質改善には途方もない歳月を要する。30年以上に及ぶ中和処理にもかかわらず湖はいまだ酸性のまま。一度壊した自然を元通りにするのは難しい。それでも努力を続けることが、せめてもの償いだ。

クニマスを巡る現状を秋田魁新報と山梨日日新聞の記者がリポートしています