北斗星(3月27日付)

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 平成生まれの人にこう返されて驚いたことがある。「あの、音の出る黒い板のことですか」。なるほど、確かに音を詰め込んだ黒い板だ。当方の質問「レコードを知っているか」に対する答えだった

▼実際に聴いたことは数えるほどしかないという。音楽は月約千円、聴き放題の配信サービスをスマートフォンで楽しむ。レコードはやはり一部の愛好者の物なのか。そう思っていたら近年は売り上げ、新譜ともに伸びている

▼針を落として音が出るまでを待つ。そのわずかな時間、かすかな雑音が何とも言えない。ぬくもりのある音に癒やされるとともに、ジャケットの写真や絵を眺める喜びがある。そんなことから見直されているのだろうか

▼アナログ音源といえばカセットテープもある。学生かばんのように大きなラジカセを引っ張り出す。40年以上も前の国産。30年ほど前の物を再生してみる。とにかく音が太くて濃い。ジャズバラードが特に良かった

▼CD登場で消えたと思っていた。それが最近、再評価されている。米国の人気歌手らの新譜も相次ぐ。そのカセットの生みの親が先頃亡くなった。オランダの音響技術者ルー・オッテンスさん。94歳だった。カセットが発表されて今年で約58年。上着のポケットに収まる大きさが開発目標だったらしい

▼この薄くて小さなケースに音楽だけでなく、ラジオ番組などを詰め込んだ人もいるだろう。懐かしい音を聴けば、忘れていた当時のことが少しずつよみがえる。

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