北斗星(3月29日付)

お気に入りに登録

 今年で没後50年を迎えた秋田市生まれの版画家・勝平得之の作品には伝統的な町家がしばしば登場する。屋根に挟まれた三角形の部分「妻壁」を通りに向けた建物が多い。妻壁には柱と梁(はり)を格子状に組み合わせ、真っ白なしっくいとのコントラストが美しい「妻飾り」が施されている

▼江戸期の絵巻などを見ると、そんな建物が軒を並べていたことが分かる。明治期の本県を旅した英国人女性イザベラ・バードや昭和初期に訪れたドイツの建築家ブルーノ・タウトがたたえたのも、そうした景観だったのだろう

▼数はすっかり減ったが、妻飾りのある町家は今も残る。秋田市内だけではない。北秋田市七日市地区の「長岐邸」や国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されている横手市増田町中心部の家々も妻飾りが目を引く

▼県内の歴史的建造物の調査・保存に関わってきた秋田市の元高校教諭五十嵐典彦さん(74)が市内の2軒を久々に訪ねたことを本紙文化欄に書いていた。「都市景観としては大変価値があり、町並みの奥行きを感じさせる」という言葉にうなずかされた

▼妻飾りの起源は定かではないが、新潟県から青森県にかけての日本海側に見られるという。中でも本県の妻飾りは柱と梁をしっかり組んであり、独特だとか

▼五十嵐さんが30年ほど前に秋田市で調査した際は、こうした伝統的町家を67棟確認した。このうち何軒が今も残っているかは不明だ。全県で調査を行い、保存につなげられないだろうか。

秋田の最新ニュース