北斗星(3月30日付)

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 昔、一つ目小僧を捕まえて見せ物小屋に売り飛ばそうとした男がいた。ようやく見付け出し連れ去ろうとしたが、逆に捕らわれた。男を見て「二つ目なんて珍しい。売り飛ばしちまおう」。先頃、秋田市で講演した落語家の立川談慶さんが披露した小話

▼いろいろな解釈ができる。人間の欲の報い、考えることはみんな同じ。あるいは「人間って駄目だなあ」。落語には失敗をテーマにした話が多いという。しくじりにこそ人は同情し、感じ入るものがあるのかもしれない

▼昨今、うまくいかないことの代表格は新型コロナウイルス対策だろう。密集は感染リスクが高まるため、宴会や出張の自粛が続いた。感染拡大は死や病床逼迫(ひっぱく)に関わるのでやむを得ない。感染は減っても今度は飲食店や観光業などが立ちゆかなくなった

▼ようやく新規感染者数が落ち着いたと見えた先週、政府は恐る恐る緊急事態宣言を全面解除した。「自粛疲れ」に送別会シーズン、春の陽気が重なり油断が出てしまったか。再拡大の対策に追われる地域も増えている

▼本県を含め変異したウイルスの浸透も気掛かりだ。この一年、新規感染者が増えては減っての繰り返し。ワクチン接種が普及すれば事態は収束するのか。そんな不安から気持ちも晴れない

▼政府も自治体もその都度、最善策を取ったのだろうけれど、対症療法止まり。「世の中、うまくいかないね」「ああそうだよね」。せめて心の中だけでも寛容になり平穏を保ちたいものだ。

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