社説:河井氏議員辞職へ 買収原資、解明が不可欠

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 一昨年夏の参院選広島選挙区を巡る大規模買収事件で、公選法違反の罪に問われた元法相の河井克行被告(自民離党)が衆院議員辞職を表明した。無罪主張から一転して地元議員らへの買収を認め、責任を取った。

 逮捕から9カ月以上たっており、あまりに遅過ぎると言うほかない。この事件には依然不透明な点がある。主導的な立場にあったとされる克行被告は、事実関係を余すところなく明らかにしなければならない。

 克行被告は妻の案里前参院議員(同)を当選させるため、地元議員ら100人に現金計約2900万円を配ったとされる。案里前議員はこのうち、4人への計160万円について共謀したとして有罪判決を受けた。

 東京地裁の判決が出る前に克行被告が買収を認めたのは、無罪主張を貫くのが難しくなったからだろう。案里前議員の有罪が確定したほか、自身の公判では100人中、94人が買収されたことを認めている。

 ただし案里前議員との共謀は否定。地元議員らへの「買収罪の事実は争わない」とした。今後の焦点は買収の原資についてどれだけの事実が明らかにされるかだ。3千万円近い資金を一体、どこから調達したのか。

 参院選公示前、自民党本部は夫妻側に資金1億5千万円を入金した。案里前議員と同じ広島選挙区に立候補して落選した現職側はこの10分の1だった。

 自民党広島県連は当時、現職を支援。党本部は県連の反対を押し切って新人の案里前議員を擁立し、保守分裂となった。

 県連との軋轢(あつれき)については克行被告も公判で認め、嫌がらせや妨害があったと指摘。県連の支援が全くなかったことが事件の背景にあるとした。

 こうも述べた。無派閥だったことなどから県連で長年孤立、当選7回でも県連の会長になれず疎外感があった―。そうした状況下、支持基盤の弱い妻を当選させようと必死になっていたところに巨額の資金が投入されたとみることができる。

 こうした当時の状況を見ると、巨額資金が事件の引き金になった疑いは依然払拭(ふっしょく)できない。公判で新たな供述が明らかになったことも注目すべきだ。

 陣営スタッフへの違法性が疑われる現金供与は「党本部からの入金が原資」とする元会計担当者の調書だ。資金の一部が買収に使われた可能性を示す重要な供述ということができる。

 資金の8割に当たる1億2千万円は元が税金である政党交付金だ。買収に使われたとなれば交付金の在り方が問われる。買収に資金が使われたのか否か。その事実解明は不可欠だ。

 買収を認めた克行被告は原資についても真実を語るべきだ。案里前議員を強力に支援した安倍晋三前首相や菅義偉首相もどう関わったかについて説明する必要がある。菅首相には党総裁として資金と買収原資との関係を早急に調査する責務がある。

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