北斗星(3月31日付)

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 小学5年の女の子が初めて1人で電車に乗って祖父母宅を訪問。翌朝、祖父が勤める工作機械を作る工場へ一緒に出掛ける。その日は祖父の60歳の誕生日。定年退職の日だった

▼「おじいちゃんの大切な一日」(重松清・著、幻冬舎)は日本のものづくりを支える職人の職場最後の一日を孫娘の視点から生き生きと描く。子供の職業観を養うのに一役買いそうな一冊だ

▼誕生日に退職の職場もあれば、年度終わりの今日が退職の日という職場もある。誰にも長年勤めた職場に別れを告げる日がいつかは訪れる。ただ60歳を機に職場を離れることはかつてほど多くないようだ

▼希望する従業員を65歳まで雇用するよう企業に義務付けた改正高年齢者雇用安定法が施行されたのは2013年のこと。あす4月1日には70歳までの就業機会の確保を企業の努力義務とする新たな改正法が施行される

▼すぐにでも70歳現役時代が到来すると思ったら、それは早計のようだ。65歳までの雇用環境もいまだ十分と言えない企業があるのが現実という。体力や健康状態には個人差が大きく、働く意欲は一様ではない。環境が整うまではしばらく時間を要するようだ

▼冒頭紹介した児童書は11年発行。図書館で同じ本を借りて読むとおじいちゃんの退職は「65歳の誕生日」になっていた。こちらは20年発行の第3刷。高齢者の雇用環境に合わせて変更されていた。退職の日が「70歳の誕生日」へ再変更される日もそんなに先ではなさそうだ。

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