社説:流域治水 連携強め効果最大限に

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 頻発する豪雨災害に対応するため、国は河川の上流・下流、本川・支川の全体で対策を講じる「流域治水」を目指している。河川管理者である国や自治体にとどまらず企業、住民などあらゆる関係者が参加して被害軽減を図る取り組みだ。

 国土交通省は、気候変動に伴い21世紀末には20世紀末に比べ洪水発生頻度が2倍になると試算する。これまでのダムや堤防整備に頼った治水では限界がある。関係者の力を結集し、それぞれが講じる対策を結び付けて全体として効果を最大限にすることが必要だ。

 平成最悪の水害を引き起こした2018年の西日本豪雨や大雨を伴った19年の台風19号(東日本台風)など水害は近年、頻発化、激甚化している。県内でも17年の記録的大雨で雄物川や芋川など25河川が氾濫した。

 流域全体で減災を図る必要性が高まる中、全国109の1級水系ごとに治水対策の全体像を示す「流域治水プロジェクト」が策定された。各水系にある省庁の出先機関や県、市町村などが水系の自然環境を考慮しながら策定に当たった。本県では雄物川、米代川、子吉川の各水系が対象になった。

 流域治水の事業は、流量を増やすための川底掘削や農業用・発電用の利水ダムの事前放流、水田に一時的に水をためる「田んぼダム」、災害発生リスクが高い地域の土地利用規制、避難態勢強化など多岐にわたる。可能な対策を総動員する格好だが、現時点では各機関が着手済みの事業や今後進める予定の事業を持ち寄ったにすぎない。

 流域全体の治水力向上には互いの事業を視野に入れて計画を練り、相乗効果を高めることが必要だ。他の地域の取り組みが参考になる場合もあるだろう。そのために関係機関は連携を一層強化しなければならない。

 プロジェクト推進のための「流域治水関連法案」が今国会に提出されている。河川法や水防法、都市計画法など9本の改正案を束ねた法案で、予算、税制面で各水系のプロジェクトを後押しする。これにより、多様な事業が迅速に進められ、一日も早く減災効果を上げることが期待される。

 流域住民の心構えも減災を図る上では重要な鍵を握る。各プロジェクトには講習会の実施などが盛り込まれている。薬や食料の準備、携帯電話の充電など、水害が予想される状況で個人が取るべき行動を時系列で整理しておく行動計画「マイ・タイムライン」の普及を進めたい。ハザードマップを基に避難経路を把握するなど、自らの命を守るには平時から備えが大切だ。

 国交省は今年の梅雨期から全国の大規模河川で6時間先の水位予測情報を提供する。従来は3時間先だった。氾濫の恐れを早期に察知し、住民の素早い避難につなげることが減災のためには不可欠。予測技術のさらなる向上にも力を注ぐべきだ。