社説:デジタル改革法案 個人情報保護の徹底を

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 デジタル庁創設や個人情報保護法改正などを柱とするデジタル改革関連法案の国会審議が大詰めを迎える。国、自治体などが保有する情報を一元的に管理することで行政の効率化を図り、国民の利便性を高めることを目的とする。

 しかし、行政機関による個人情報の利用に歯止めがかからなくなることを懸念する声がある。個人情報保護の徹底が不可欠だ。

 デジタル庁創設の動きは昨年始まった。新型コロナウイルス対策として一律10万円の特別定額給付金を支給する際、自治体のオンライン手続きが混乱し、支給が遅れたことがきっかけだった。

 関連法案の内容は、首相をトップとして国の情報システムを統括するデジタル庁の新設をはじめ、マイナンバーの利用拡大、電子データを用いた行政手続きの簡便化、個人情報保護制度の見直しなど多岐にわたる。既に衆院を通過したが、重要法案として十分な審議が行われたとは言い難い。

 政府は「人に優しいデジタル化」「誰一人取り残さないデジタル社会の実現」を目指すと説明している。だが、肝心の具体像が見えてこない。分かりやすく内容を示すべきだ。

 国による個人情報利用に行き過ぎがないように監視することも重要だ。個人情報保護法改正案では、現在は民間、行政機関、独立行政法人のそれぞれについて別個に定められた三つの情報保護法を一本化する。個人情報の適正な取り扱いを確保するために設置されている個人情報保護委員会の役割は大きく変わることになる。

 これまで委員会は民間の個人情報利用を監視するのが主な役割だった。改正案では国の機関や地方自治体も監視対象に加える。委員会は人員不足などが指摘されており、十分に機能を発揮するために大幅な体制拡充を求めたい。

 行政機関は「相当な理由」があると判断した場合、本人の同意なしで個人情報の目的外利用や提供ができる。改正案では、委員会は行政機関に是正を求める「勧告」ができるものの、「命令」はできない。民間に対しては命令もできるとされ、バランスを欠いていると言わざるを得ない。

 自治体ごとに条例で定めてきた個人情報保護規定は全国共通ルールになる。災害時の避難者情報などを自治体間で共有しやすくする狙い。だが共通化により、現在よりも個人情報保護が弱まるようなことがあってはならない。

 デジタル庁創設は、菅義偉首相が昨年9月の自民党総裁選で公約に掲げ、今年9月の発足を目指す。法案はきょう14日、参院本会議で審議入りする。個人情報の保護に対する不安や懸念を払拭(ふっしょく)するため、衆院では足りなかった議論を尽くすことが求められる。

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